東都歳時記では、「かきつばた」については、「立夏より2,3日め頃より」と書いてあります。立夏は今年は5月5日ですので、5月の初旬に咲くというこになります。
一方、和漢三才図会には、「5月が盛りであるが、一年中花を開くものがある」と書いてあります。旧暦の5月1日は、今年は5月24日ですので、和漢三才図会の方が、現代に近いような気がします。
「かきつばた」はアヤメ科に属していますが、アヤメとの区別が難しいため、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句があり、区別がつきがたいという意味にも用いられています。
アヤメと「かきつばた」との区別は確かに難しいのですが、花に網目の模様があるほうがアヤメで、網目模様のないほうが「かきつばた」で区別しています。
「かきつばた」の名は、古くは「かきつはた」と清音で、花の汁を衣にこすって染めるという「書き付け花」から由来していると言われています。
かきつばたといえば、何といっても、在原業平の歌が有名です。
伊勢物語の中で、東下りの途中、三河国八つ橋(現在の知立市八橋)で、咲いていたかきつばたを歌に詠み込みました。
からごろも きつつなれにし つましあれど
はるばるきぬる たびをしぞ思ふ
このことは和漢三才図会の中でも、「三州(みかわ)の八つ橋の産が有名である」として上の歌とともに紹介されています。
愛知県の県花は「かきつばた」ですが、「かきつばた」が県花になったのは、この伊勢物語の話がもとになっています。
また、この話を題材にした「杜若」という能があります。旅の僧と杜若の精である女とのやりとりですが、かなり有名な演目で、インターネットで調べるとすぐに検索できます。みなさんも検索してみてください。