「江戸グルメ誕生」は、江戸の食文化について、万遍なく広い分野を網羅してあり、かつ簡潔に書いています。
著者の山田順子女史はTBSテレビで放映され話題となった「JIN―仁―」の時代考証を担当したこともある時代考証家であり、学者でないということもあって、文章は平明で、「江戸の食文化」に初めて触れる人でもわかるように書かれています。
斜め読みで全体を把握するのには良いと思いました。また、平易だからといって馬鹿でできない内容も含まれているとも感じました。
さて、その「江戸グルメ誕生」の中に将軍の食事のことが書かれていますので、まず将軍の食事について書いていきたいと思います。
「江戸グルメ誕生」には、江戸城の食事担当について概ね次のように書かれています。
江戸城の食事担当部門には、800人から1000人が勤めていて、そのトップは「御膳奉行」で、幕末時点で6人いました。
将軍の食事や菓子など食べるものすべてをチェックする責任者です。
「鬼役」とも言われる毒見役も担当しました。
その多くは、三河出身の旗本が任命されました。
食材や食器の調達と管理を担当するのが「賄方(まかないかた)」です。
そして、適切な仕入れができているかチェックする「調役」、さらに品の良し悪しをチェックする「吟味役」がいました。
さらに荷物運びなどの力仕事をする「六尺」や米を臼でついて精米する「舂(つき)屋勤」がいます。
そして、実際に調理をするのが「台所人」です。
以上ですが、「江戸グルメ誕生」より詳しく、食事関係の役職について書いているのが、笠間良彦氏著の「江戸幕府役職集成」です。
それによると次のようです。
御膳奉行が食事担当部門のトップで、その下に、御賄頭、御膳所御台所頭、奥御膳所御台所頭、表御台所頭、西の丸御膳所御台所頭、西の丸御台所頭がいます。
御賄頭が、食材等の調達担当です。
御賄頭の下に、御賄方、御賄調役、御吟味役などの役職があります。
そして、実際の台所で調理を担当する部門として、御膳所御台所頭、奥御膳所御台所頭、表御台所頭、西の丸御膳所御台所頭、西の丸御台所頭がいます。
御膳所御台所頭が将軍の食事、奥御膳所御台所頭が大奥の食事、表御台所頭が大名以下諸役人の食事、西の丸御膳所御台所頭は西の丸にいる先代将軍や次期将軍の食事、西の丸御台所頭が西の丸の諸役人の食事を担当します。
御台所頭は5部門に分かれていますが、御膳所御台所頭の下には、実際に調理する「御膳所御台所人」、御膳所の雑用をする「御膳所御台所小間遣」、「「御膳所御台所改役」、飯米を舂く「御舂屋勤」、力仕事を行う「御膳所御台所六尺」がいました。
他の「奥御膳所御台所」や「表御台所」「西の丸御膳所御台所」もほぼ同様の役職となっています。
主な人数を書くと
御賄方が125人、御賄六尺が500人、御膳所御台所人が40人、奥御膳所御台所人が30人、表御台所人が40名、
これだけで、700人を超えています。別の本では、御賄方に賄新組という担当があり300人超の人数がいたと書かれているので、1000人を超えるほどの大勢の人が、江戸城で食事に関わっていただろうと思われます。
その多くは、将軍、御台所の食事に関わっていたわけです。