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千住ねぎ(江戸野菜④ 江戸の食文化62)
 今日も江戸野菜について書いていきます。

 今回の江戸野菜についての記事を書くにあたっていろいろお教えいただいた大竹道茂さんのブログ 「江戸東京野菜通信」 に、この江戸野菜に関する記事をご紹介いただきました。
 大変丁寧にご紹介いただき、大竹さんに改めて感謝申し上げたいと思います。
 本当にありがとうございました。 

 さて、江戸野菜の四回目は、「千住ネギ」です。

 ネギは、ユリ科の植物で、原産地は中国西部あるいはシベリアとされています。
千住ねぎ(江戸野菜④ 江戸の食文化62)_c0187004_9514718.jpg 中国では、2200年前からすでに栽培されていたと言われている古い野菜です、
 しかし、ヨーロッパには16世紀末、アメリカには19世紀に伝わったものの、欧米ではあまり普及しませんでした。
 日本では、『日本書紀』の中に、仁賢天皇6年9月(493年)に「秋葱(あきぎ)」の名前がでており、「和名抄」にも出てきており、古くから栽培されています。

 「ネギ」という名前ですが、古くは「葱(き)」の一音でした。そのため「一文字(ひともじ)」という別名もあります。
 その「葱(き)」の根を賞味することから「根葱(ネギ)」と呼ぶようになったと言われています。

 江戸野菜として有名なネギは「千住ネギ」です。
千住ねぎ(江戸野菜④ 江戸の食文化62)_c0187004_9521590.jpg ネギは大きく分けて「白ネギ(根深ネギ・長ネギ)」と「青ネギ(葉ネギ)」があります。東日本では白い部分を食べる白ネギが好まれていて、西日本は根元まで青い「青ネギ」が一般的になっています。
 また、ネギの品種には、大きく分けて「千住群」「加賀群」「九条葱群」と三つあります。
 「千住ネギ群」は、現在では、関東を中心として東日本で栽培されており、一般に根深ネギと呼ばれています。
 関東でネギといえばこの「千住ネギ群」を指します。
 ネギの中では最も背が高く、葉の部分に深く土を寄せて日に当たらないようにすることで白い部分が多くなるように栽培します。

 ネギは、天正年間に、摂津から江戸の砂村や品川に持ち込まれたそうです。
 摂津より寒い江戸では葉が枯れてしまいました。これではもったいないと土の中の白い部分を食べるようになり、元文年間にはいわゆる「根深ネギ」の「砂村ネギ」が作り出されたそうです。
 この「砂村ネギ」が隅田川を遡り、葛西・足立方面でも栽培されるようになり、特に千住地区で良質なネギが収穫されたことから「千住ネギ」と呼ばれるようになりました。
 しかし、千住ネギの「千住」というのは、実は産地の名前ではなく、ネギ市場が千住にあったのが由来で、実際の産地は、葛飾区北部一帯で、この地域が、昭和の中期まで「千住ネギの産地」として広く知られていたという説もあります。

 また、「千寿葱」と書くネギもあります。
 この「千寿葱」は、現在、東京都足立区にある「山柏青果物市場」という葱専門の市場でのみ取り扱われるネギで白ネギのトップブランドですが、江戸時代から続く伝統野菜ではなく、その後交配された品種です。

 最後にネギの話題を二つ紹介しておきます。
千住ねぎ(江戸野菜④ 江戸の食文化62)_c0187004_10403391.jpg ネギの花は、その形から「葱坊主」(ネギぼうず)といい、「擬宝珠」とも呼ばれます。橋の欄干にある「擬宝珠」は、ネギの花からついた名前だという説もあるそうです。

 また、「ネギ」は、色の名前にも採りいれられています。
 「あさぎいろ」という薄い青緑をした色がありますが、この「あさぎいろ」は漢字で「浅葱色」と書いて、葱の葉の色の浅いものを指します。
 江戸時代、遊郭では、田舎から出てきた武士を「浅葱裏」と読んでいました。
 これは、田舎武士の多くが浅葱色の裏のついた羽織をきていたため、こう呼ばれるようになったと言われています。
 その浅葱色というのは、葱の葉の色に由来しているんですね。
 また、「もえぎいろ」という色があります。
 「もえぎいろ」というのは鮮やかな黄緑色系統の色ですが、この「もえぎいろ」は漢字では「萌葱色」と書いて、葱の若芽のような黄色を帯びた緑色をさします。

 右上二つの写真は、農文協発行の「江戸東京野菜」図鑑編に掲載されている「新宿一本ねぎ」の写真です。
 「新宿」というと、新宿区の「新宿」を思い浮かべますが、この「新宿一本ねぎ」の「新宿」は、水戸街道の「新宿」です。現在は葛飾区新宿となっていて、最寄駅は常磐線の「金町駅」です。
by wheatbaku | 2014-07-16 09:52 | 江戸の食文化

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
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