旧暦の8月15日は、放生会(ほうじょうえ)でした。
放生会については、前々から書こうと思っていたのですが、今週土曜日に江戸検講座があるため、その準備で忙しく、アップできませんでしたので、今日アップします。
放生会は、仏教の戒律である「不殺生戒」に従って、功徳を積むために、捕獲した魚や鳥獣を川や山野に放す行事です。
もともとは仏教の行事でしたが、日本では神仏習合によって神道にも取り入れられました。
放生会は、八幡宮を中心に行われました。
宇佐神宮(大分県宇佐市)では、奈良時代初期にはすでに始められていました。
そして、京都の石清水八幡宮では、平安時代には勅祭として行われていました。
江戸では、富岡八幡宮の放生会が有名でした。
東都歳事記には、8月15日には富岡八幡宮をはじめ多くの八幡宮で「八幡宮祭礼」が行われましたが、その中で、各神社で放生会が行われていると次のように書かれています。
富賀岡八幡宮 別当永代寺 (略)
三田八幡宮 別当無量院 (中略) 当月(8月)10日に放生会を行う。
西ノ久保八幡宮 別当普門院 (中略) 今日放生会をなす。
市谷八幡宮 別当東円寺 今日放生会あり。
高田穴八幡宮 別当放生会寺 (中略) 毎年放生会 境内の放生池あり。
若宮八幡宮 別当普門院 牛込にあり。放生会を行い、境内にて踊りを崔す。
今戸八幡宮 別当松林院 今日放生会あり。宮戸川へ魚を放つ。
東都歳事記では、富岡八幡宮についての放生会については書いてありませんが、「江府年行事」には放生会が行われていたことが書かれています。
江戸の各所の八幡宮で行われる放生会のため、放生会のための「放し亀」「放し鳥」「放し鰻」を売る露店がでたり、町中を「はなし鳥、はなし鳥」または「はなし亀、はなし亀」などと売り声をあげて売り歩く行商人もいたようです。
「放し鳥」はほとんどが雀だったようですし、「放し亀」は橋のたもとでも売られていたようです。
この「放し亀」で有名な絵が、歌川広重の『名所江戸百景 深川万年橋』です。
万年橋は小名木川にかかる橋ですが、右の絵に大きく描かれているのが、放し亀です。
橋の欄干の手前に置かれた桶に放し亀が
しばりつけられている絵です。
描かれているのが深川万年橋ですから、富岡八幡宮での放生会のために売られていたのだと思われます。
ちなみに万年橋が取り上げられているのは、富岡八幡宮が近いという理由のほかに「鶴は千年、亀は万年」という洒落も効いているといわれています。