
意次が若々しく描かれており、幼馴染との交流も明るく書かれており、好感がもてる内容である。
題名は、意次の相良城に対する思いから付けられたと思う。『海の彼方から様々な船が入津し、海からやって来る魚達のよりどころになるような城を作りたい』と書かれた文章が出てくる。
この中で、特に注目した点は、松平定信が白河藩の養子になった事情に触れた部分である。一般的には、田沼意次と一橋治斉(ハルサダ)の陰謀という書き方をする本が多いが、この小説では、異なる視点を提供している。その部分を要約すると次のようである。
松平定信が白河に養子にいったいきさつは、
①定信の実父の田安宗武が、兄の家重でなく自分が9代将軍を継ぐべきであると強く主張したため、家重は宗武を許さないと思っていた。その思いが、10代将軍家治に伝わり、家治も田安家をよく思っていなかったこと。
②田安治察(ハルアキ)も病弱な兄を押しのけて家督を継ごとする弟定信を不快に思い、兄弟仲が悪いので、治察白河藩に婿入りすることに大賛成であったという田安家兄弟間の事情。これらによるものである。
なるほどと理解しやすい事情である。

