今年(2009年)で、創業310年になる老舗です。
創業者は初代高津伊兵衛で、伊勢四日市出身で、日本橋の近くで元禄12年(1699年)に創業し、 享保5年、日本橋瀬戸物町(現 室町2丁目)に鰹節の小売の店を出しました。
現在の本社は、当時の位置とかわらないそうです。
「にんべん」の商号の由来
宝永2年(1705)初代伊兵衛は、店の屋号を「伊勢屋伊兵衛」とし、暖簾印(商標)に伊勢屋と伊兵衛のイ(にんべん)をとり、商売を堅実にするためのお金(かぎの形)を合わせて、「カネにんべん」としました。これについて、江戸の町民たちは、「伊勢屋」のかわりに、誰いうとなく「にんべん」と呼ぶようになりました。にんべんの社名は、江戸町民によって命名されたということです。
鰹節が本来の商品ですが、鰹節削り器がないのでと話をしたら、お店で鰹節の写真を撮らせていただけました。
そして、鰹節削り器も準備していただきました。
地下には、「にんべん」の歴史を紹介するコーナーがあります。その中で有名なものが陳列されていました。 初代が大書したという「現金掛け値なし」の看板と「日本最古の商品券」です。
初代伊兵衛の信条(良品廉価主義)である、「現金掛値なし」の看板(復刻版)です。
日本最古の商品券の説明です。「この商品券は、鰹節の格好をした銀の薄板で、表面には金額を記している。他面に発行店の“にんべん”の刻印があって、“にんべん”取扱の商品である鰹節との交換は、老若男女の別なくこの券持参の人に、行ったものである。これは商品券というよりは引換手形としたほうが良い。とにかく“にんべん”の鰹節券は、銀の薄板である関係上、所持人は金属価値を認めて尊重したものである。ついで現れたのが、紙で出来たところの商品券である。」と書いてありました。
最後に、高津伊兵衛を紹介した小説を2つ案内いただきました。荒俣宏さんの「男に生まれて 江戸鰹節商い始末」とねじめ正一さんの「商人(あきんど)」の二つです。お二人は取材のために「にんべん」をよく訪れたと話してくれました。「男に生まれて 江戸鰹節商い始末」はお店に置いてありましたが、「商人」は残念ながら完売とのことでした。
店長さんをはじめお店の人は、お客様がいるにもかかわらず、写真を撮ることも快く了解していただき、親切に説明もしていただきました。日本橋の老舗に息づく伝統のサービス精神を実感させていただきました。ありがとうございました。