朝顔は、ヒルガオ科の植物です。
日本人に大変なじみのある植物ですので、日本原産の植物と思っている人が多いかもしれませんが、熱帯アジアの原産と言われ、日本へは奈良時代に中国から渡来した植物です。
最初は 牽牛子(けんごし)と言われ、下剤など薬用に使われていました。
古代の中国では朝顔は高価な薬で牛と取引されたほどのものだったそうで、「牽牛(けんぎゅう)」にその名残があります。
今でも漢方では種子を下剤や利尿剤に使っています。
奈良時代に渡来した朝顔ですが、文学でかなり取り上げられています。
万葉集には、秋の七草として山上憶良(やまのうえのおくら)が歌った歌に
秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり)
かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花(おばな)葛花(くずはな) 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし)
また藤袴 朝貌(あさがお)の花
があります。しかし、この歌のなかの「朝顔」は桔梗と言われています。
平安時代以降の有名な文学には、「朝顔」はかなり紹介されています。それだけ身近だったのでしょう。なお、平安以降の「朝顔」は、現代の朝顔だと言われています。
まず、源氏物語です。
源氏物語では、20帖が 「朝顔」 となっています。
そこには、光源氏のいとこで、源氏の求愛を拒み続けて友達関係で終わった「朝顔の君」が登場します。
枕草子では、65段で、
「草の花は 撫子(なでしこ)、唐のはさらなり、大和のも、いとめでたし。女郎花。桔梗。朝顔。刈萱(かるかや)。菊。壺すみれ。」と書かれています。
方丈記では、
「あるじとすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。あるいは露落ちて花残れり。残るといへども朝日に枯れぬ。あるいは花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども夕べを待つことなし。」と無常観を象徴する花として使われています。
徒然草では、139段に
「家にありたき木は、松・桜。--- 中略 ---
草は、山吹・藤・杜若・撫子。池には、蓮。秋の草は、荻・薄・桔梗・萩・女郎花・藤袴・紫苑・吾木香(われもこう)・刈萱・竜胆・菊。黄菊も。蔦・葛・朝顔。いづれも、いと高からず、さゝやかなる、墻(かき)に繁からぬ、よし。 --- 後略 --- 」
と書かれています。
このように、室町時代まで、数々の文学に取り上げられていた朝顔が、庶民にひろがるのは江戸時代に入ってです。
そして、江戸時代後期には大ブームとなります。その動きは、次回に書きます。