すしはもともと自然発酵による保存食です。
早いもので1カ月、長い場合には3年かかるものもあります。
やがて、人々は、長く待つことより早く食べたいと考えるようになってきました。
そのため、江戸時代に入り、「酢」に出会って、自然発酵を待たずに、発酵を促進するために、飯に酢を混ぜてつくる 「早ずし」 が生まれます。
また、ご飯は最初は発酵を助けるためだけでしたが、江戸時代になると、ご飯そのものもおいしく食べる 「早ずし」 へと変わっていきました。
早ずしの中に分類されるすしは、現在、全国各地にいろいろあります。
そのうち代表的な押しずし・包みずし・姿ずしを取り上げます。
鱒寿司 (押しずし)
押しずしは、飯と具を重ね、一定時間、力をかけて押したものです。
駅弁としても知られている「鱒寿司(ますずし)」は、富山県の郷土料理です。
鱒を使って、発酵させずに酢で味付けした押し寿司(早ずし)の一種です。
木製の曲物(わっぱ)の底に放射上に笹を敷き、塩漬け後に味付けをした鱒の切り身をその上に並べ、そこに酢めしを押しながら詰め、笹を折り曲げて包み込み、その上から重石をしたものです。
享保年間に富山藩第3代藩主前田利興の家臣が8代将軍徳川吉宗に鮎寿司を献上したときの製法が、現在の鱒寿司と同じ早ずしであったことが記載されていて、この時に吉宗の絶賛を受けたとする逸話が現在の鱒寿司の起源として語られているそうです。
柿の葉ずし (包みずし)
包みずしは、木の葉や笹の葉などで包んで保存性と美的付加価値を高めたすしです。
先日紹介した「笹巻けぬきすし」も包みずしです。
地方の包みずしで有名なものは、「柿の葉ずし」です。
柿の葉すしも江戸時代に生まれました。和歌山県や奈良県の名産品として全国的に有名です。
保存用に塩でしめた鯖の切り身をご飯に添え、柿の葉で包んで一晩置いたところから、柿の葉ずしは生まれたとされています。
江戸時代中期に、夏祭り用のご馳走として振る舞われるようになったそうです。
柿の葉寿司 posted by (C)テツさん
さばずし(棒ずし) (姿ずし)
姿ずしは、魚の頭や尾は残し、背開きや腹開きにして、魚で飯を包み込むようにしてつくられるすしです。
まず、背開きや腹開きにした魚に塩をあて、塩をよくなじませて洗います。
次に酢につけてから水分をよくとり、頭から尻尾まで酢飯をよく詰め、笹などを敷いた箱に並べて重石をします。
こうして作られるさばずしは秋祭りに食べる地域が多いようです。
京都や大阪では、さばずしは、三枚におろした身を塩と酢でしめ、棒状に伸ばした飯をのせて押し圧をかけてつくります。
そのため、京都や大阪では、さばずしは、「棒ずし」と呼ばれます。
「棒ずし」が、ご飯を棒状にするのは、魚の姿をできる限り生かそうという工夫から行われており、「姿ずし」の名残りとも考えられています。
7月11日の日経プラスワンに「夏におすすめ取り寄せずし」というランキング記事がありました。
この中で、第1位は「鯖街道 花折の『京、鯖寿し』」で、5位、6位、8位にもさばずしが入っていました。
さばずしは、非常に人気のある商品なんですね。