これらは、それぞれに優れた特質があり、いずれも繊維が長くて強靱で、光沢があり、和紙の特徴である薄くて強い性質を表しています。
和紙の材料となるこれらの植物の特徴とそれから作り出される代表的な和紙について紹介します。
楮(こうぞ)
クワ科の落葉低木です。
本州以西の山野に生え、また畑や山すそに植えられます。
高さ2~5メートル、茎の径20センチメートルぐらいになります。
葉は長さ10センチメートルくらい、左右不整の卵形で先はとがり、縁は鋸の歯のようになっていて、しばしば深く2~5つに分かれています。
右上の写真は、小津和紙の玄関に植えられていた楮です。
春、花が咲きます。雄花は楕円形で若枝の基部に咲き、雌花は多数が球上に集まって上部につきます。
果実は、六月ごろ、最下段の写真のように、赤く熟し、甘味があって食べられます。
楮はすらりと枝がのびた低木で、1年で1m以上ものび、冬に、鋭利な鎌で株を残して根元から一気に一枝も残さずに全部刈り取ります。
そのほうが、翌年均等な品質のものが育ちます。
それを、蒸して皮をむき、外皮を除いた部分を紙にします。
楮紙(こうぞがみ)
楮紙(こうぞがみ)とは、楮を原料として漉いた紙のことです。
楮の繊維は、麻についで長く平均9ミリあります。
楮は繊維が長く、絡み合う性質が強く、そのため、粘り強く、もんでも破れない紙ができます。
丈夫であったために重要な公文書や長期間の保存を要する文書の用紙として用いられて、長く和紙の代表的な存在とされてきました。
代表的な楮紙には、檀紙・奉書紙・杉原紙などがあります。
また、和傘や障子、襖の材料としても用いられている。
檀紙(だんし)
檀紙は、楮を原料として作られていて、縮緬状のしわがあります。
古い奈良時代には主に弓を作る材料であったニシキギ科の落葉亜喬木である檀(マユミと読みます。また真弓とも書きます)の若い枝の樹皮繊維を原料として作られたためにこの名があります。
平安時代からは楮を原料として作るようになった朝廷・幕府で使用する高級和紙です。
厚手で美しい白色が特徴であり、主として包装・文書・表具などに用いられます。
奉書紙(ほうしょがみ)
奉書紙(ほうしょがみ)は、楮を原料とした厚手の紙です。
奉書とは、天皇や将軍などの意向や決定を奉じて、下位の者が自己の名義でその旨を記した文書です。
その「奉書」という命令を書いた紙も、次第に「奉書紙」と呼ぶようになりました。
室町時代ころから漉かれていましたが、江戸時代に最高級の公文書用紙として盛んに梳かれました。
杉原紙(すぎはらがみ/すいばらがみ)
杉原紙とは、播磨国多可郡杉原谷(現在の兵庫県多可町)で漉かれた和紙です。
平安時代から梳かれていましたが、本格的に普及したのは鎌倉時代に入ってからです。
奉書紙や檀紙よりも厚さが薄く、贈答品の包装や武家の公文書にも用いられました
楮の花と実の写真は、季節の花300さんのご提供です。