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雁皮紙(がんぴし) (江戸の技)
 小津和紙の玄関前には、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)の三種の和紙の原料となる木が植えてあります。雁皮紙(がんぴし) (江戸の技)_c0187004_22421377.jpg
 写真の左に楮、中央に雁皮、右に三椏がそれぞれ植えられています。さすが、紙問屋だと感心しました。

今日は、「雁皮紙(がんぴし)」の説明です。

雁皮(がんぴ)  
 雁皮はジンチョウゲ科ガンピ属の落葉低木で、奈良時代から製紙原料として用いられています。
 生育する東限は静岡の伊豆、北限は石川の加賀市付近までです。
 四国、九州、静岡、兵庫などに多く、暖地を好む植物です。
 高さは1~3m、枝は褐色、葉は卵型で互生し、初夏に枝端に黄色の小花を頭状に密生します。

雁皮紙(がんぴし)

 雁皮紙(がんぴし) (江戸の技)_c0187004_22393848.jpg 雁皮紙は楮紙(こうぞがみ)とともに和紙を代表する紙です。楮の栽培が容易なのに対して、雁皮は栽培が困難なので、野生のものを採集しなければなりません。
 そのために原料の供給に限界があり、生産量は非常に少なくなります。
 雁皮は、成育が遅く栽培が難しいため、自生している雁皮を生剥ぎにして捕獲します。
 生剥ぎにするため、水揚げの良い春から夏にかけて収穫されます。

 雁皮の繊維は5ミリ前後と短く、半透明で光沢があるため、紙の表面は平滑できめ細かく、美しい艶を持っています。そのため、かな書きに適した料紙など、高級紙として高く評価されてきています。

 遣唐使と共に唐に渡った最澄が、わざわざ土産として筑紫の斐紙(雁皮紙)を200張り持参しています。
  紙の先進国である中国に、土産として持参できるほどに高い評価を得ていたことになります。

 雁皮紙は、平安期の公家の女性たちに、かな文字を書くのにもっともふさわしい紙として愛用されました。
 もっとも良質な和紙原料で、永久保存の記録用紙として尊重され、中世から近世にかけて、鳥子紙の名で知られています。

 このように、平安時代の薄様、鎌倉時代の鳥の子紙などが代表的な雁皮紙です。

雁皮紙(がんぴし) (江戸の技)_c0187004_2240247.jpg 鳥子紙(とりのこがみ) 
 雁皮を原料とする紙で、鳥の卵のような淡い黄色を帯びているためにこのような名前がついたと言われています。
 なめらかでコシがあり 耐久性のある美しい紙です。
 近世には、雁皮紙というより鳥の子紙の呼称が多いそうです。



薄様(うすよう)  
 雁皮で薄く漉いた紙を言います。本来は厚様・薄様という紙の厚さを指す言葉ですが、雁皮は薄紙を漉くのが容易であり、雁皮を薄紙にすると下が透けてみえ、強い印象を与えるので、薄様は雁皮紙を指すようになったと思われます。
 たとえば、下に藍色の薄様を置き、その上に紅色の薄様を重ねると紫色になります。このことが、平安時代の貴族社会の女性たちに好まれ、料紙や手紙などに愛用されたようです。
by wheatbaku | 2009-08-11 05:50 | 江戸の技

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