三椏(みつまた)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木です。
みつまたは、その枝が必ず三叉、すなわち三つに分岐する特徴があるため、この名があり、三枝、三又とも書きます。
成木は2メートル余りになり、苗を植えてから3年目に収穫できます。葉はだ円型で互い違いの向きにはえます。
春の訪れを、待ちかねたように咲く花の一つが三椏です。
花は初秋から樹木の先につぼみをつけ、翌年2~3月頃外側から内側に向け順番に開花し、花びらは黄色で4枚に分かれ、一つの花に8本の雄蕊、1本のめしべがあり6月頃実を結びます。
春を告げるように一足先に、淡い黄色の花を一斉に開くので、三椏のことをサキサクと万葉歌人は呼びました。
三椏は雁皮と違って栽培が可能なので、大蔵永常は「広益国産考」(1844年刊)で各地の栽培例を紹介しています。
しかし、当時は三椏の特色はあまり知られておらず、「三椏紙」という紙名は登場していません。
三椏が一般的に重要な製紙原料となったのは、明治の初年に印刷局が初めて使用した頃からです。
明治11年パリで開かれた万国博に大蔵省印刷局が出品したミツマタ製厚紙は「局紙」と名付けられて、欧米でも高く評価されました。
それを受けて、三椏の栽培を奨励しました。
重要な原料としての需要が増大するに伴って、栽培が次第に中国、四国地方に広がっていきました。
今日では岡山県の生産量が第一位で、その他、高知県、徳島県、鳥取県、愛媛県などで生産されています。
繊維は柔軟で細くて光沢があり、印刷適性に優れていて、世界一の品質を誇る日本銀行券の原料として使用されています。
この他、箔合紙、かな用書道用紙、美術工芸紙などに使用されています。