萩という漢字は、草冠に秋ですから、まさに秋を代表する植物ということになると思います。
しかし、萩という字を使用するようになったのは平安時代からで、それまでは、「芽」「芽子」と書いて「ハギ」と読んでいたようです。従って、万葉集では「ハギ」に対して「萩」という文字は使われていません。
ハギという名前の由来は、毎年古い株から芽を出すという意味の「ハエキ(生芽)」からという説や「葉黄(ハキ)」の意味からという説、早く黄ばむという意味の「ハキ(早黄)」からなど諸説あります。
萩の種類は約40種ありますが、ヤマハギの仲間とメドハギの仲間に分かれていて、ヤマハギは木本系でメドハギは草本系です。しかし、観賞の対象になるのは、ヤマハギの方で、ヤマハギにはキハギ、シラハギ、ヤマハギ、ミヤギノハギ、ツクシハギなどがあります。
萩は、古くから日本人に親しまれており、『万葉集』では最も多く詠まれている花で、141首の歌がみられ、万葉集に登場する160種の植物の中で、最も歌が多いそうです。
また、当時は、「花見」と言えば、春は梅を見て、秋は「萩」を楽しむものだったそうです。
枕草子では、[草の花は]の段に、
『萩、いと色深う、枝たおやかに咲きたるがあさ露に濡れてなよなよとひろごり伏したる。さお鹿のわきて立ちならんも、心ことなり』 と記されています。
また、徒然草では、
『家にありたき木は、・・・(中略)。(家にありたき)草は、山吹・藤・杜若・撫子。池には、蓮。秋の草は、荻・薄・桔梗・萩・女郎花・藤袴・紫苑・吾木香・刈萱・竜胆・菊。黄菊も。蔦・葛・朝顔。いづれも、いと高からず、さゝやかなる、墻に繁からぬ、よし。この外の、世に稀なるもの、唐めきたる名の聞きにくゝ、花も見馴れぬなど、いとなつかしからず。 」
と書かれています。 なでしこ以外の秋の七草が挙げられていますね。
江戸時代の萩の名所は、向島百花園と亀戸の龍眼寺です。
江戸名所花暦の中で、
向島百花園は、
『向じま花やしき。 秋草の中にも七草と唱えて愛玩するを、この園中にはみなそろえて植込みたり。』
と、七草すべてがそろっていると紹介されています。
今でも、七草が植えられていますが、その中でも萩のトンネルが有名ですね。
そして、龍眼寺については
『竜眼寺 庭に萩を多く植えたり。もとより、池水清らかにして、萩の花ざかりには、にしきをつらねたり。いまはことさら数千叢(すうせんそう)になりて、貴賤群をなして歩行(あゆみ)をはこぶ。俗よんで萩寺といふ』
と書かれています。
龍眼寺は、現在も萩の寺として有名ですが、まだ訪ねたことがないので、行ってみたいですね。萩の時期に・・・。
最後に、宮城県では、宮城野萩(ミヤギノハギ) を県の花に指定しています。「なるほど、やはり宮城県」と思います。