女郎花は、沖縄をのぞく日本全土および中国から東シベリアの日当たりのよい原野に普通に見られます。多年草で高さ1メートル前後で茎は真っ直ぐに立ち茎の上方で分岐しています。
8~10月に、茎の上部の枝分かれした先に多数の黄色い小花を傘状に咲かせます。
女郎花の仲間は、オトコエシ、ハクサンオミナエシ、キンレイカ、オオキンレイカ、チシマキンレイカなど15種類以上が知られています。
女郎花の名前の由来は、花の色が、オミナ(女性)をもヘス(圧する)、つまり美女を圧倒する美しさという意味からだという説やオミナ(女性)がウエシ(植えし)花という意味だという説や丈夫な印象があるオトコエシに比較して、全体として優しく見え、オミナ(女性)のように見えて「オミナエシ」と呼ばれたという説などあります。
大言海は、「花の色、美女を圧(へ)す意かといふ」と説明しています。
万葉集には女郎花を詠んだ歌が14首あります。
オミナエシの文字は、女郎花のほかに、美人部為、佳人部為、娘子部四などの文字があてられているそうです。
オミナには、「美人、佳人、娘子」という字があてられていて、どれも、美しい女性を思わせる文字の用い方になっています。
「おみな」について、広辞苑で調べてみると、「美人、佳人」と書いています。
大言海では、「女、音便にオウナ、オンナ」と書かれています。ということは、「おみな」から、現在の女性を指すオンナという言葉になったということだと思います。
その後、平安時代初期以降は、女郎花の3字があてられるようになりました。
「源氏物語」に、
『花といえば名こそあだなれ女郎花なべての露に乱れやはする』
の記述があり、「女郎花」の文字があてられているそうです。
平安時代の頃には、「女郎」という言葉には、遊女という意味はなく、女性という意味だけだったのではないでしょうか!
ですから、「女郎花」というのは、「美しい女性に似た花」という意味だったのでしょう。
女郎花は、花の美しさとはうらはらに、草や根を乾燥させると醤油(しょうゆ)の腐敗したような臭いがするそうです。
こうしたことから、敗醤(はいしょう)という漢名が生まれました。「敗」には、腐るという意味もあります。
そして、草全体または、根茎を乾燥したものを敗醤と称して、漢方薬として用います。