守貞謾稿で 『江戸にありて京阪になき陌上(はくじょう)の賈(あきない)人』という項目で、江戸だけにある路上での商売を解説していますので、今日はそれを紹介します。陌上(はくじょう)の陌は道という意味であり、陌上とは路上の意です。
第2回と第4回に出題された「ゆでたまご売り」については、この項に書かれています。
☆竹馬古着屋
「竹具の四足なるを担う。故に竹馬と云う。古衣服および古衣を解き分かちて、衿あるいは裡(うら)、その他諸用の古物を売る。」
☆冷水売り
「夏月、清冷の泉を汲み、白糖と寒晒粉の団(子)を加え、一椀4文に売る」
☆湯出鶏卵(ゆでたまご)売り
「鶏卵の水煮を売る。価大約20文。因みにいう。4月8日には、鶏とあひるの玉子を売る。あひるの玉子を食する者は、中風を病まざるのまじないと言う。」
☆文庫売り
文庫というと本を思い出しますが、守貞謾稿では文庫とは「籠製筥を紙張りにし、黒漆を塗りたるを云う。女子小裁ち等を納るの器とす」と云うことで小物入れです。
☆附木(つけぎ)売り
附木というのは「杉や桧の薄き板などの一端に硫黄を塗りつけたもの」を言います。それを売る商売です。
☆水弾(みずはじき)売り
水弾(みずはじきとは)竹筒の先の穴から水を噴き出す水鉄砲のことを言います。江戸時代は、おもちゃとしてだけでなく、消火用の実用的なものであったようです。
☆番付売り
芝居狂言の番付をうります。
☆払い扇筥売り
江戸では年始礼に行くとき年玉として「扇筥」、「袋納扇」を持参し配りました。これ買い集め、年玉用にまた売る商売です。
☆墨渋屋
板塀、塀の腰板、板庇等を塗る商売です。
☆竈(かまど)塗り
かまどの修理をします。
☆払い合羽
武家の奴僕等が用いた古い紙合羽を買い、小民、雇夫等に所用に売る商売です。
☆あじろ蓋売り.
「夏月これを売る。けだし江戸は専ら円形の飯器にして、鍮輪の桶に蓋も掾あり。夏は網代蓋をもってこれに代える。」これだけだとよくわかりませんが、「おはち」にかぶせる竹で網代に組んだ蓋をあじろ蓋と呼んだように思われます。
以上のほかにに次のような商売も上げられていますが、名前の通りの商売ですので、説明は省略します。
笊(ざる)・味噌漉(みそこし)売り、苗売り、蕣(あさがお)売り、鮨売り
草履売り、納豆売り、白酒売り、白玉売り、歯磨き売り、麹売り、
乾海苔売り、納豆売り、蚊帳売り、小蚊帳売り、竹箒売り、草箒売り、
三絃売り、蓑売り、塩辛売り