現在では、桜といえばソメイヨシノのことを指すほど、全国で植えられている桜の大部分がソメイヨシノとなっています。
【ソメイヨシノ】
ソメイヨシノ(右写真)の花弁は5枚で、葉が出る前に、木全体を覆うように淡紅白色の花をつけます。花色は咲き始めは淡紅色だが、満開になると白色に近づいていきます。
葉より先に花が咲いて、華やかに見えることや若木から花を咲かすため、全国各地に植えられていています。
しかし、ソメイヨシノの歴史は浅く、幕末から明治初期に、江戸の染井村から「吉野桜」の名で売り出されたものといわれています。
しかし、「吉野桜」では、吉野山の桜(つまりヤマザクラ)と混同されることから、植物学者の藤野寄命(ふじの よりなが)が「染井吉野(ソメイヨシノ)」と名づけました。明治33年のことでした。
【ソメイヨシノの出自】
ソメイヨシノの出自については、三つの説があります。
(1)江戸時代に染井村(現在の東京都巣鴨)で人工交配してつくられたという説
(2)伊豆半島に自生していた自然交配種だという説。
オオシマザクラとエドヒガンが自然に交配したものだという説です。
この説をとる場合、エドヒガンが房総半島に自生していないため、オオシマザクラとエドヒガンがともに自然分布する伊豆半島付近で発生したとされました。
しかし、伊豆半島のオオシマザクラには、ソメイヨシノにつながる特徴がなかったため、自然交配の可能性は否定的だそうです。
(3)韓国済州島に自生している王桜がという説
戦前に植物学者の小泉源一が韓国の済州島に自生する「王桜」がソメイヨシノの起源とする説を唱えました。 しかし、その後これら2種は全くの別種である事が確認されたそうです。
が、韓国では現在も王桜がソメイヨシノの起源と主張している人もあるそうです。
これらの3説がありますが、現在は、染井村で育成されたとする説が有力です。
【ソメイヨシノの親】
それでは、ソメイヨシノの親はどれかということです。
大正5年にアメリカン人植物学者のウィルソンが、ソメイヨシノの起源はエドヒガンザクラとオオシマザクラ(中の写真)の交配によって、生まれたものと推測しました。
その後、国立遺伝学研究所の竹中要の交配実験によって、そのことが実証されています。
現在では、ソメイヨシノは伊豆地方を中心に自生するオオシマザクラと東京の上野公園にあるコマツオトメとの交配で生み出されたという説が有力です。
コマツオトメ(下写真)は上野公園の小松宮彰仁親王の銅像の東北脇に原木があります。