先日のハカマオーのコメントに中岡慎太郎が犯人という説があると書かれていました。
ハカマオーの言う通り中岡慎太郎をはじめ土佐藩関係者が暗殺犯であるという説がありますので、今日はそれを紹介します。
新人物往来社の菊池明氏著「龍馬暗殺完結変」の中で陸援隊士犯行説と後藤象二郎説が取上げられています。
【陸援隊犯行説】
まず、陸援隊犯行説について書きます。
坂本龍馬が暗殺された直後から、薩摩藩や土佐藩が関係しているという情報は流れていたそうです。
肥後藩士の上田久蔵という京都留守居役であった人物が、事件を知らされた後の12月4日の「日録」に次のように書いているそうです。
坂本龍馬、暗殺に逢う。後藤象二郎、走免のこと、けだし龍馬を刺すは土州人なり。
上田久兵衛は龍馬が暗殺されたと聞き、刺客は土佐人と直感しました。それは、公武合体を進めてきた土佐藩だけれども、武力倒幕派が台頭してきたため、大政奉還論者の坂本龍馬が排斥されたと考えたのです。
また、鳥取藩の「鳥取藩慶応丁卯筆記」には次のように書かれているそうです。
土佐藩の内聞を探索候ところ、藩士二気にあい分かれ、一途は白川組諸浪士あい集まり、しきりに暴論の徒のみ建て論じ増長にて、今一途は後藤象二郎同意周旋の徒は右の暴論の徒を取り鎮めおり候よし。(中略)いまだ事件発せず候えども、隔論あいなり候様子にて、梅太郎(龍馬)となお今一手とは、たちまち不和を生じ、ほとんど殺伐の次第に及ばんとするの事情に基づき候よし。
「白川組諸浪士」というのは中岡慎太郎が率いる陸援隊のことであり、武力倒幕派の陸援隊は、後藤象二郎や龍馬の一派と、いずれは殺し合いに発展しかねない状態だったようです。
こうした情況だったので、陸援隊が邪魔者の坂本龍馬を襲撃したというのが、「陸援隊犯行説」となります。
しかし、武力倒幕派の中岡慎太郎はじめ陸援隊が坂本龍馬を排斥しようというのはわかるが、中岡慎太郎まで襲撃しなければならない理由がわからないと菊池氏はいい、この説に否定的です。
【中岡慎太郎犯人説】
これに関連して中岡慎太郎犯人説について触れておきます。
9月22日付けのハカマオーのコメント通りですが、中岡慎太郎は武力倒幕派、坂本龍馬は平和的倒幕派です。坂本龍馬と中岡慎太郎は意見がちがったわけです。
そこで、龍馬を説得するために、近江屋を訪問し議論しますが、龍馬が考えを変えぬため、龍馬に突然に斬りかかったというものです。
この説を読者のみなさんはどう思われますか?・・・
【後藤象二郎黒幕説】
土佐藩が暗殺に関係しているという説の中には、後藤象二郎が事件の黒幕であるという説もあります。
それによると、土佐藩の藩論を大政奉還論にまとめあげた後藤象二郎は、その発案者が龍馬であったことが公になり、自分の権威が失墜することをおそれ龍馬殺害指令を出したという説です。
これに対して、菊池氏は、後藤象二郎が提案者として認定されるという前提そのものが間違っているといいます。
大政奉還策のもととなった「船中八策」を文書にしたのは長岡謙吉でした。だから、長岡謙吉は大政奉還は龍馬の発案であることを知っていました。
また、大政奉還を土佐藩が建白するにあたって、6月22日に、後藤象二郎は、料亭で薩摩藩の小松帯刀、西郷隆盛、大久保利通と面談し薩摩藩の了解を取り付けていますが、その席に、坂本龍馬と中岡慎太郎も同席しており、小松帯刀や西郷隆盛は大政奉還の発案したのが坂本龍馬であることを知っており、後藤象二郎が自分の独創であると主張できる情況ではありませんでした。
こうしたことから後藤象二郎黒幕説も否定されると菊池氏は言っています。