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「浅野内匠家来口上」(江戸検お題「本当の忠臣蔵」56)
 「忠臣蔵」について先週は、「深川会議」まで書きましたが、今日も討入りの準備についてです。
 赤穂浪士が討入りした際に、吉良邸に掲げ、仙石伯耆守に自首する際にも持参したものに「浅野内匠家来口上」があります。
「浅野内匠家来口上」(江戸検お題「本当の忠臣蔵」56)_c0187004_8373564.jpg これは、討入りの趣意書です。
 この「浅野内匠家来口上」を起草したのは堀部弥兵衛ですが、この口上書が起草されたのが「深川会議」が開かれた頃と言われています。
 右は本所松坂町公園に掲示されている「浅野内匠家来口上」です。

 この口上書の元となったのは、赤穂市編纂の「忠臣蔵第1巻」によれば、堀部弥兵衛の残書(遺書)であるということです。
 その草案を元に、細井広沢の意見を聞いた完成させたそうです。
 細井広沢は、儒学者で、当時柳沢吉保に200石で召し抱えられていました。
 細井広沢は、堀部安兵衛とは剣術を堀内  のもとで学んでいる仲間で、大変親しくしていました、
 堀部安兵衛は、彼の筆記「堀部武庸筆記」を細井広沢に託しています。
 「堀部武庸筆記」には、仇討についての大石内蔵助とのやりとりなどが記録されていますが、「堀部武庸筆記」を預けるほど、堀辺安兵衛は細井広沢を大変信頼していました。
 この細井広沢は細井広沢で赤穂浪士を大変支援していました。
 討入りの際には、自分の屋敷の屋根にのぼり、本所方面を眺めていたという話も残されています。
 そうした関係から、口上書の表現でアドバイスをもらっています。

 「口上書」の中に、「君父之讐共不可戴天」という言葉があります。
 下記の「口上書」全文のうち、赤字で表示した部分です。
 「礼記」の中には、「父の讐(あだ)は与共(とも)に天を戴ず」とあるのみで、「君父」とは出ていませんでした。
 そこで、堀部親子は、細井広沢に意見を求めたところ、細井広沢は「問題ない」と答えたと言われています。

 口上書の全文は後記の通りですが、読み下し文を先に書いておきます。
 江戸検を受験される方はしっかり読んでおいた方がよいと思います。

「去年三月、内匠儀、伝奏御馳走の儀に付き、吉良上野介殿へ意趣を含み罷りあり候ところ、御殿中において、当座遁(のが)れ難き儀御座候か、刃傷に及び候。
時節場所を弁えざる働き、不調法至極に付き、切腹仰せ付けられ、領地赤穂城召し上げられ候儀、家来どもまで畏れ入り存じ奉り、上使御下知を請け、城地指し上げ、家中さっそく離散仕り候、
右喧嘩の節、御同席御抑留の御方これ在り、上野介殿討ち留め申さず、内匠末期残念の心底、家来ども忍び難き仕合いに御座候。
高家御歴々に対し、家来ども鬱憤をさしはさみ候段、憚(はばか)りに存じ奉り候えども、君父の讐(あだ)ともに天を載くべからざるの儀、黙止しがたく、今日上野介殿御宅へ推参仕り候。
ひとえに亡主の意趣を継ぎそうろう志までに御座候。私ども死後、もし御見分の御方御座候わば、御披見願い奉りたく、かくの如くに御座候  以上
元禄15年12月日


浅野内匠家来口上
 去年三月内匠儀伝奏御馳走之儀付
 吉良上野介殿へ含意趣罷在候処、
 於 御殿中当座難遁儀御座候歟及刃場(傷)候、
 不弁時節場所働無調法至極付
 切腹被 仰付領地赤穂城被 召上候儀
 家来共迄畏入奉存、  請 上使御下知
 城地指上家中早速離散仕候、
 右喧嘩之節御同席御抑留之御方在之
 上野介殿討留不申内匠末期残念之心底
 家来共難忍仕合御座候、
 対高家御歴々家来共件鬱憤候段憚奉存
 候得共、君父之讐共不可戴天之儀難黙止
 今日上野介殿御宅江推参仕候、
 偏継亡主之意趣候志迄御座候、
 私共死後
 若御見分之御方御座候は
 奉願御披見如斯御座候、以上
               元禄十五年極月日      
by wheatbaku | 2013-08-26 08:36 | 忠臣蔵

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
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