そこで、季節ごとの行事に伴う食について「行事の料理」として、適宜書いていきたいと思います。
お正月は、一年のスタートですので、お正月に関する料理は、おせち、お屠蘇、鏡餅、雑煮、七草がゆなど目白押しです。
これから七草までは、正月の料理を中心にブログを書いていきますが、今日は、「おせち料理」について書いてみます。
これらの行事に関する料理については、千葉大学名誉教授の松下幸子先生著の「祝いの食文化」に詳しく書かれていますので、「おせていえ料理」についても、「祝いの食文化」に基づいていきましょう。
おせち料理とは、正月に食べるお祝いの料理です。
「おせち」は「御節」と書いて、正月や五節句などの節日(せちび)に神に供える「御節供(おせちく)」の略です。節句に神に供えた神饌を下げて、家族が食べる直会(なおらい)の食べ物が本来の「おせち」でした。
それが、いつの間にか節句の一番目にあたる正月の料理が「おせち」と呼ばれるようになりました。
おせち料理は重箱に詰めますが、これはめでたいことを重ねるという願いが込められています。
おせち料理の基本は四段重ねで、上から順に、一の重、二の重、三の重、与の重、と呼びます。四段目のお重を「四の重」と言わないのは「四」が「死」を連想させ縁起が悪いとされているからです。
現在では、おせち料理は重詰が普通ですが、江戸時代から、おせち料理が重詰であったわけではありません。
おせち料理が重詰になった歴史について松下幸子先生は次のように書いています。
江戸時代も天明(1781-89)ごろまでは、喰積はその名のように、つまんで食べられるものでしたが、その後は食べる形だけで実際には食べないものになりました。
その後寛政(1789-1800)ごろから、食べられる祝い肴(数の子・ごまめ・黒豆など)を詰めた重詰が作られるようになり、飾るだけの喰積は重詰と並存し、明治になると喰積はすたれて重詰が一般化したものと考えられます。
この中に書かれている喰積(くいつみ)というのは、あまり馴染がないものですので、これについて少し説明しておきます。
喰積については、「江戸の食文化」の参考書籍とされている「『近世風俗史』つまり『守貞謾稿』の(4)」の「蓬莱」の項に記載されています。京坂(京都・大坂)では蓬莱と呼ばれたものが、江戸では喰積とよばれました。
「守貞謾稿」によるとその作り方は、三方の中央に真物の松竹梅を置きます。そして三方に白米を敷くこともあります。その上に燈一つ、密柑、橘、榧(かや)、搗栗(かちぐり)、草薢(ところ)、ほんだわら、串柿、昆布、 伊勢海老などを積み、裏白、ゆずり葉などを置くとあります。
この中の「草薢(ところ)」は聞きなれない植物ですので、調べましたら、ヤマノイモ科の蔓性多年草だそうです。根茎から多数の髭根を出す様が老人の白い髭にみたてられて、長寿の縁起物として蓬莱に飾るそうです。(右写真参照)また「守貞謾稿」には、江戸の喰積は、正月初めて來る客には、必ずまづこれを出して、客も少しとって一礼すると元の場所に戻すとも書いてあります。
形式的な物だったようですね。
さて、おせち料理に詰められる料理にはそれぞれちゃんと意味が込められています。
松下先生は「祝いの食文化」では、「数の子」「黒豆」「田作り」「きんとん」「たたき牛蒡(ごぼう)」について、それぞれについて次のように書いています。数の子
ニシンは一名「かど」というそうです。「かどのこ」がなまって数の子になったそうです。
たくさんの卵があるというところから、子孫繁栄の願いが込められています。
黒豆
一年中「まめ(まじめ)」に働き「まめ(健康的)」に暮らせるようにとの願いが込められています。
黒豆と呼ぶのはそれほど古くはなく、以前は「座禅豆」と呼んでいました。
座禅豆という名前は、僧が座禅をするときにこの豆を食べる小便が止まるところからの名前だそうです。
「嬉遊笑覧」には「正月殊さらにこれを設て正式のようなれど、昔酒の肴に絶ず用いたる遺風なり」とあります。
田作り
田作りは、「ごまめ」とも呼び、片口鰯の稚魚を素干しにしたものです。
田作りの語源は、昔田を作る肥料として用いたからとも、また農夫が田植えの時の祝い肴にしたからとも言います。
田作りは、小殿腹ともよぶので子孫繁栄を祝うものという説や京都御所で衰微していた時世に、頭つき一尾の魚として一番安いごまめを元日に供されたのが始まりという説もあります。
きんとん
きんとんという名前の食べ物はかなり古くからあります。
しかし、今のきんとんとは異なるものでした。
現在のきんとんは、甘く煮た栗や隠元豆をさつまいものあんとまぜたものです。
しかし、江戸時代の料理書では、きんとんは金色の団子であったり、和菓子のきんとんであったようです。和菓子のきんとんは,あんや求肥を芯にして,色とりどりのそぼろあんをまぶしつけた上生菓子です。
(右写真はきんとんの一例)
現在のおせち料理のきんとんは明治時代からのもののようです。
たたき牛蒡
たたき牛蒡は、あまり太くない牛蒡をやわらかくなるまでゆでて、すりこぎなどでたたき適当な長さに切り、胡麻酢に漬けたり調味液で煮たりしたものです。たたくのは、ごぼうの繊維をたたいてほぐし、調味料がしみ込みやすくし、また食べやすくするためです。
正月に牛蒡を用いるのは、根が地中深く入るところから、家の基礎が地の底まで堅固であることを祈る意味があるともいわれ、また身体によい食品であるからとも言います。
これ以外にも、「鯛」には定番の縁起物で「メデタイ」に通じ、「海老に」は腰が曲がるまで丈夫という長寿の願いが込められいて、「昆布巻き」には「よろこぶ」 の意味が込められているなど縁起のよい理由が挙げられえています。

