人気ブログランキング | 話題のタグを見る
将軍の食事② (江戸の食文化6)
 昨日に続いて、今日も「将軍の食事」について書こうと思います。
 昨日は、江戸城内に1000人を超える食事担当がいると書きました。
 そうしますと、将軍の食事はさぞ豪勢であろうと思われると思います。
 しかし、あにはからずや、将軍の食事は、私達が思うほど豪勢ではないようです。
 もちろん、江戸庶民よりは豪勢でしょうし、将軍によってもちがうとは思いますが、質素にしていた将軍もいました。

 まず、初代の徳川家康についてですが、「江戸グルメ誕生」に書かれているところでは、徳川家康は、常に「一汁一菜」を守っていたと言います。
将軍の食事② (江戸の食文化6)_c0187004_8583161.jpg そして、次のようなエピソードがあるそうです。
 ある時、城内の女中たちが、漬物の味が塩つぱいと苦情を言い出しました。
 そこで、御膳奉行を呼んで、どうして塩っぽくしているのか問いただしたところ、奉行は「ちょうどいい味付けにすると、たくさん食べてしまい、食費が増えてしまいます。そこで塩っぽくして少しの量ですむように工夫しているのです」と答えました。家康は「あっぱれ」と言って、以後も塩っぽくするように指示したといいます。

 さらに、8代将軍吉宗は、一汁三菜を厳しく守り、しかも「身を養うには一日二食で十分だ」といって、当時広がりつつあった一日三食の風を頑強に拒否したといいます。

 また、別の本では、将軍ではありませんが、将軍近くに仕える幕閣に関して次のような話が載っていました。
 3代将軍家光の時、家光のお咄衆役に任ぜられた大名たちは、毎日弁当を持参して登城し、城中萩の間で食事を摂ることになっていました。
 そんなある日のこと、長府藩藩主毛利秀元が弁当のおかずに鮭の切り身を入れていったところ、皆が珍しがり、ついには老中阿部重次や儒者の林羅山まで顔を出してお裾分けにあずかり、「珍味!珍味!」と一同舌鼓をうったといいます。
 
 また、5代将軍綱吉の側用人柳沢吉保の食事は、「柳沢秘蔵雑実記」によれば
 「朝は一汁三菜、夕御膳は一汁五菜、御夜食は一汁三菜、朝夕随分軽き品召上られ候」と書かれているようです。


 ところで、料理とくに本膳料理の場合には、「一汁一菜」「一汁三菜」など「○汁○菜」と呼ばれます。
 このことについて触れておきます。
 「江戸のグルメ誕生」によれば「一汁一菜」といった場合には「ご飯、汁、菜、漬け物」のセットを言います。つまり、ご飯と漬け物はあるのが前提で、その他に、汁と菜(おかず)がどれだけついているかということを表しているようです。
 昨年末にお邪魔した東京家政学院大学生活文化博物館の特別展「江戸の綾里」に本膳料理が展示されていました。(右上写真)
 この展示されている本膳料理は、「一の膳」と「二の膳」の「二汁七菜」とのことでした。つまり汁物が二つで、菜(おかず)が七つということになります。
 ですから、家康は、ご飯と汁と漬け物、そしておかずが一つ、吉宗は、おかずが三つということになります。
 将軍といえども随分つつましやかな食事だということがわかると思います。

 なお、江戸時代は、「汁」と「吸い物」が区別されていて、料理本でも「汁の部」と「吸い物の部」とが区別されていました。
 「汁」と「吸い物」の違いは、供される場面により変わるようです。食事の席では「汁」と呼ばれ、酒肴であれば「吸い物」となります。
by wheatbaku | 2014-01-08 09:00 | 江戸の食文化

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
ブログジャンル
歴史
日々の出来事