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「二八そば」(そば② 江戸の食文化78)
 今日は、「二八そば」について書きます。

 江戸時代の「そば」といえば、すぐに「二八そば」が思い出されます。

 「ニ八そば」が登場するのは、江戸時代中期の享保の頃と考えられています。
 「二八そば」という言葉が初めて登場するのは、『衣食住記』という書物です。
「二八そば」(そば② 江戸の食文化78)_c0187004_1249880.jpg それには、「享保半比、神田辺にて二八即座けんどんといふ看板を出す」と書かれています。
「けんどん」」とは「うどん」のことで、当時は、そばはうどん屋で売られていたので、これが根拠だとされています。
 しかし、「けんどん」と書かれていて、「そば」と明確に書かれていないので、根拠としてはあやふやだという人もいます。
 しかし、他の『享保世説』という書物の享保13年(1728)のところに、
 「仕出しには 即坐麦めし 二八そば みその賃づき 茶のほうじ売」
 という歌が書いてあるそうです。
 こちらには、明確に「ニ八そば」と書かれてあります。
 従って、享保13年には、「ニ八そば」があったということになります。
 これから、「二八そば」の起源については、享保年間起源説が有力のようです。

 多くの本には、前述のごとく「二八そば」享保起源説が書かれています。
 しかし、「守貞謾稿」には
 「またある書に云う。ニ八蕎麦は寛文4年に始まる」と書かれています。(近世風俗志一のP201 )
 これによると、江戸時代に前期に登場したということになります。
 しかし、これについて触れた本がないので、守貞謾稿の寛文起源説が正しいのかどうかは不明です。

 次に「ニ八そば」の名前の由来について書きましょう。
 「二八そば」という名前の由来については、二つの説があります。
 その一つは、「二八、十六」の語呂で、そばが一杯十六文だったからだとする代価説
 そしてもう一つは、「そば」をそば粉八割、つなぎの小麦粉二割を混ぜたもので打ったからとい配合率説

 「そば」は江戸時代の長い間、16文でしたが、「ニ八そば」が登場した享保のころは一杯が10文しなかったそうですし、幕末の慶応年間には20文になっています。こうしたことから代価では説明できないという人もいます。
 また、配合率も少し難があります。
 小麦粉だけで作るうどんにも、「ニ八うどん」という名前がついていたことがありました。
 また、そばの名前には「ニ八そば」以外にも「一八そば」「二六そば」「三四そば」というのもあったそうです。これらの名前は、配合率を表しているとは考えられません。

 こうしたことから、「代価説」、「配合率説」どちらが正しいかというのを決めるのは難しいようです。
 「守貞謾稿」では、「すなわち価を云う」と書いていますので、代価説を取っています。
 そば研究科の元神戸大学教授の新島繁さんは、その著書「蕎麦の事典」の中で、
 「ニ八は16文の代価説と、そば粉八割につなぎの小麦粉二割の配合率説に分かれるが、これは、時代を区分せずに論議してきたため。そばの値段が20文を超えた慶応期を一つの境にして、それ以前は代価説、慶応以後は配合率説をとるのが正しい」
と書いていて、慶応期以前は代価から、慶応期以後は配合率からとしています。

 「二八そば」も案外難しいものですね。
by wheatbaku | 2014-08-27 12:42 | 江戸の食文化

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