そこで、今日は「八杯豆腐」のご紹介です。
『江戸の食文化』には、豆腐を水六杯・醤油一杯・酒一杯の割合の汁で煮た物と書いてあります。
すごく簡単な豆腐料理です。
この「八杯豆腐」は、「豆腐百珍」の中に載っています。
実は、「豆腐百珍」の中には、二つの「八杯豆腐」が載っています。
一つが「草の八杯豆腐」、もう一つが「真の八杯豆腐」です。
「草の八杯豆腐」については、次のように書かれています。
豆腐を太いうどん状に切り、醤油に酒で加減して、薄葛を引く。おろし大根を置く。
読んでわかる通り、水六杯、酒一杯、醤油一杯とは書かれていません。一方、「真の八杯豆腐」には
絹ごしのすくい豆腐を用い、水六杯と酒一杯をよく煮返した後、醤油一杯を足し、さらによく煮返し、豆腐を入れる。おろし大根を置く。
と書かれています。
そこで、木綿豆腐を短冊状に切り、『江戸の食文化』の通り、水六杯、醤油一杯、酒一杯の割合で作った汁を一旦煮立てて、そこに豆腐を入れて温まったら、出来上がりです。
それが、右写真です。
出汁(だし)もつかわず、醤油と酒と水だけですので、素朴な味ですが、おいしかったです。
手軽にできるので、江戸の庶民がおかずの筆頭に挙げたのも十分理解できるものでした。
写真を撮り食べ終わってから、大根おろしを加えるの忘れていることに気が付きました。
次回は、大根おろしを忘れないで作ってみようと思います。
豆腐は、木綿豆腐を使うように書いてありましたので、木綿豆腐を使用しましたが、
絹ごし豆腐の方が、写真写りはよいかもしれません。
ところで、木綿豆腐と絹ごし豆腐の違いはわかりますか?
日本豆腐協会のホームページに、二つの違いについて説明してありました。
それによると、木綿豆腐は、豆乳に凝固剤を加えて一度固めたものを崩してから、圧力をかけて水分をしぼり、再び固めたものです。
一方、絹ごし豆腐は、濃度の高い豆乳に凝固剤を加えて、そのまま固めて作ったものだそうです。
絹ごし豆腐のほうが手間がかかっていると思いましたが、予想外に木綿豆腐の方が手間がかかっているんですね。
作り方の違いにより、食べた時の食感が違うだけでなく、栄養分も違うそうです。
最後に、江戸検に出題されそうな江戸庶民のおかず番付である『日々徳用倹約料理角力取組』にかかれているおかずを列挙しておきます。
番付の右の「東方」には「精進方」として野菜のおかず,左の「西方」には「魚類方」として魚のおかずが列挙されています。
精進方の大関は「八杯豆腐」、関脇に「昆布油揚げ」、小結に「きんぴらごぼう」,
前頭は、筆頭が「煮豆」、次いで、「焼き豆腐」、「ひじき白あえ」、「切ぼし煮付け」、「芋がら油揚げ」、「油揚げつけ焼き」、「小松菜浸しもの」
魚類方」の大関は「めざしいわし」です。関脇に「むきみ切干し」これは貝のむき身と切干し大根を煮たもの、 小結は「芝えびからいり」、これは芝エビを炒めたものです。
前頭筆頭は「まぐろから汁」これはマグロだけの味噌汁です。次いで、「こはだ大根」、「たたみいわし」、「いわし塩焼き」、「まぐろ剥身(すきみ)」、「塩かつお」、「鰊(にしん)塩引き」