江戸では、海苔を使った料理や食品が数多く開発されています。
その中で、代表的な 「海苔巻き」「焼き海苔」「味付け海苔」 についての書いてみたいと思います。
海苔巻き寿司
海苔を使った料理でもっともなじみがあるのが、海苔巻きでしょう。
海苔巻き寿司ができたのは江戸時代です。
にぎり寿司は、文政年間にできたと言われていますが、海苔巻きは、それよりも50年ほど早い安永の頃にはもう作られていたと言われ、天明の頃には流行していたといわれています。
それが、文化・文政期になると、ますます海苔巻きが好まれ、屋台でも売られたりするようになりました。
屋台の寿司が流行しだすと、手間のかかる太巻きに代わって簡単に巻き上げられる細巻きが現れました。
守貞謾稿には海苔巻の図が描かれ「干瓢を巻きこむ」とあります。
こうして江戸っ子たちは海苔巻きに親しんでいったのです。
焼き海苔
焼き海苔は、乾した海苔の裏表をていねいに焼いたものです。焼き上げた海苔の艶が美しく、風味もよく、海苔をもっともおいしく味わうことのできる食品です。
焼き海苔をはじめてつくったのは大森の海苔商人三浦屋田中孫左衛門という人で、弘化元年(1844)にガラス瓶に詰めて売り出したそうです。
その後しばらく中断していましたが、明治初年に山形屋の5代目窪田惣八が、「貯蔵(かこい)海苔」の名で発売しました。
海軍が買い上げたこの海苔が遠洋航海でも変色変味しなかったことから評判となり、多くのお店で販売され始めました。
この海苔が、明治中期から「焼き海苔」と呼ばれるようになったのです。
写真は、山本山の焼き海苔です。
味付け海苔
味付け海苔を開発したのは、山本海苔店です。
明治2年に、明治天皇が京都に行かれる際に、皇太后へご進物として持っていくものとして、山本海苔店2代目山本徳次郎が開発しました。
山本徳次郎は、品川猟師町で作られていた「薬味海苔」を参考にして「色紙海苔」として納めたところ、すごく賞賛されたそうです。
「薬味海苔」とは抄(す)く直前にみりん、しょうゆ、山椒、陳皮、唐辛子等を入れたものだったそうです。
これが、味付け海苔の始まりですが、初期は注文製造でしたが、明治中期以降店頭でも販売されるようになったそうです。
なお、このお話は宮下章の「ものと人間の文化史、海苔」に基づきます。
写真は、山本海苔店の味付け海苔です。