江戸っ子は茄子がー好みにあったのか、初茄子を珍重し、促成栽培が行われるほどでした。
このため、初物の規制により、売り出し期日が4月からと決められていました。
その江戸っ子が珍重した初茄子は高価であるとともに小型でもあったようです。次のような川柳があります。
目へ這入るほどで 目の出る 初茄子(はつなすび)
初茄子(はつなす)は 富士に縁ある 高根なり
ちいさくて 口にはいらぬ 初茄子(はつなすび)
その初物のなすを食べて、冷害を予測したのが、二宮尊徳です。
二宮尊徳は、小田原藩領の農家の出身ですが、生家の再興した後、小田原藩家老服部家の財政再建に成功したのを小田原藩主大久保忠真に見込まれ、小田原藩大久保家の分家である旗本宇津家の桜町領の再建を任されていました。
再建がとりあえず成功した後の天保3年の夏の初め、二宮尊徳は食べたなすの味がいつものなすの味と違い、秋なすの味がすることに気が付きました。
観察力の鋭い二宮尊徳は、これは、冷夏の予兆ではないかと思い当たりました。
そこで、冷害に強い稗(ひえ)を植えさせるように、農民たちに指示しました。
その年の夏は、二宮尊徳の予想した通りの冷夏で凶作でした。
しかし、二宮尊徳の指示に従って、稗を植えていた桜町領は、一人の死者も出しませんでした。
右上写真は、吉祥寺にある二宮尊徳のお墓です。
秋なすの話題がでましたが、「秋なすは嫁に喰わすな」という俗説があります。
これは鎌倉時代の和歌集「夫木集」にある「秋なすび わささのかすに つけまぜて よめにはくれじ 棚に置くとも」という和歌に由来すると言われています。
一般的には、嫁いじめの意味に考えられていますが、なすはたくさん食べると腹痛・下痢を起こしやすいので、嫁の身体を労わって詠んだという説もあります。
「本朝食監」には、「多食すれば、身体によくないという説もあるが、生なすを食べないことはない 」と書かれています。
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最後に、「本朝食鑑」に、なすの花の効用でおもしろいものが載っていましたので紹介します。
「花 虫牙(むしば)の急痛には、一蕚(がく)を患部の牙(は)で噛めば、たちどころにに癒える」と書いてあります。本当に、なすのがくが虫歯に効いたのでしょうか・・・