諸白(もろはく)
まず「諸白」ということが良く出てきますが、「諸白」とは何かについて説明します。
日本酒は、麹により米のでんぷんがブドウ糖に分解され、アルコールへと変わって製造されます。
この製造工程で、麹を造るために使われる米が「麹米」で、酒母やもろみを仕込む際に加える蒸した米を「掛米」といいます。
諸白とは、日本酒を造る際に、麹米と掛け米(蒸米)の両方に精白米を使用する製法です。
寒造り
お酒は、江戸時代初期までは、秋の彼岸前後から春の彼岸すぎまで造られていました。
そして、造る時期によって次の5種類に区別されていました。
それは、新酒、間酒(あいしゅ)、寒前酒(かんまえざけ)、寒酒(かんしゅ)、春酒(はるざけ)と呼ばれていました。
その中で、小寒から立春までの約30日間が酒造に最適の時期であり、この時期につくることを寒造りといいました。
段掛け
段掛けは、段仕込みとも言い、醪(もろみ)造りにおいて、その前の工程で造られた酒母(しゅぼ)もしくは酛(もと)へ、原料である麹と蒸米を三回に分けて加えていくこと
三段仕込みは、三段階を、初めから初添(はつぞえ)、仲添(なかぞえ)、留添(とめぞえ)と呼んで、4日間かけて仕込まれます。
火入れ
火入れとは、醸造した酒を加熱して殺菌処理をすることをいいます。
火入れされる前の酒は、まだ酵母が生きて活動していますし、麹により生成された酵素もその活性を保っているため酒質が変化しやすく、乳酸菌の一種である火落菌が混入している恐れもあります。
こうした状態のまま放置しておくと酒が白く濁ってしまいます。これを火落ちといいます。
そこで火入れすることにより、これら酵母・酵素・火落菌を殺菌あるいは活動を低下させて酒質を安定させることができます。
火入れすることにより酒は常温においても長期間の貯蔵が可能となります。
なお、火入れは、63度~65度程度の低温で行われます。
お銚子と徳利
現在では、お銚子を徳利とはあまり区別されません。しかし、江戸時代中期までは、はっきりと区別されていました。
近世風俗志(守貞謾稿)5には、詳しく書かれていますので、それを参考に書いていきます。
徳利は、今では酒を注ぐのに用いられていますが、近代に瓶売りが一般化するまで、酒は量り売りするのが一般的で、酒屋は徳利に入れて酒を販売しました。
徳利は個人の所有ではなく酒屋の貸し物であることが普通で、酒屋の屋号が大きく書かれていました。
銚子は、燗をつけた酒を盃に注ぐための器です。本来の銚子は注ぎやすいように長い柄がついていました。
守貞謾稿には、昔は鉄製の大きなものでしたが、近世のものは小さくなり、ちろりで燗をした酒を移すと書いてあります。
ちろりとは銅や錫または真鍮製の容器で、中に酒を入れ容器ごと湯につけて燗をしました。
また、江戸では銚子は正式の膳である式正(しきしょう)にのみ使うもので、略式の時には燗徳利を使うのが普通と書いてあります。
式正にも初めのうちは銚子を使い、三献するともっぱら徳利を使用するようになり、大名ですら略式の場合の酒宴では徳利を使うようになったと書いてあります。
ちろりの燗酒は大変飲みにくいとも書いてあります。そのためだんだん使用されなくなったのでしょう。