今週日曜日(11月2日)に、江戸検が実施されました。
江戸検のお題「江戸の食文化」のために、模擬試験問題も出題しながら連載を続けてきましたが、江戸検の本番の一級の問題についてコメントして欲しいとの要望をいただきましたので、3回に亘りコメントします。
今日は、1問から7問までコメントします。
コメント内容は、私なりのコメントです。
内容やレベル評価等について、お気に召さないこともあるかもしれませんが、ご容赦ください。
問題を見させていただき、私も1時間半かけてチャレンジしましたので、問題も正確に把握していますが、問題文をそのままブログに掲載するのは、差しさわりがあると思いますので、問題については内容のわかる程度にコンパクトにしてあります。これもご容赦ください。
1、吉宗の仰せにより婚礼の祝膳の吸い物に使用されるようになった貝は何か(中級レベル)
答えは「蛤」です。
常識的に考えれば、「蛤」を選択する人が多いと思いますが、吉宗の仰せといった説明がついているので迷った人もいるかもしれません。
文政13年写しの「明君享保録」という書には、「享保年間に8代将軍吉宗が結婚式の祝膳に蛤の吸い物を発案する。二夫にまみえぬ貞節の教えともなる」と書かれているようです。
天保3年(1832)の「三省録」には、「婚礼に蛤の吸物は、享保中明君の定め置き給ふよし、まことに蛤は数百千を集めても、外の貝等に合わざるものゆえ、婚礼を祝するに是程めでたき物なし、それ故の御定めなり」とあります。
2、小豆粥が食べられるのが慣例となっていた日はいつか?(上級レベル)
正解は「15日」です。
小豆粥は、小豆と白米を混ぜて炊いた粥です。右写真参照
小豆粥は、別名、十五日粥、もちがゆとも言います。もちがゆは「望粥」と書きます。陰暦の十五日(満月)は望の日ともいい、この日に食べる小豆粥を食べる習慣があったことから「もちがゆ」とも呼ばれたようです。
正月15日は小正月ですが、この日はもち粥の節句といって、小豆粥を食べて一年の邪気を払う習慣がありました。
「江戸の食文化」42ページにも、「小正月に小豆粥を食べると一年の災難を払う」と書かれています。
この部分を覚えていて、正解がわかった方もいるかもしれません。でもそこまで読んでない人も多いと考え上級レベルとしました。
3、諸白の発祥の地と言われる地はどこか?(初級レベル)
諸白については、「江戸の食文化」109ページにコメントされています。
「諸白」は京都・奈良の僧坊で作られ始めたもので、奈良で作られる酒は「南都諸白」と呼ばれて有名でした。
従って、答えは奈良です。
4、「( )料理秘伝抄」という料理書の( )内に入る食材名は何か?(中級レベル)
この書名は、「江戸の食文化」145ページに「大根料理秘伝抄」と書かれています。
ですから、「江戸の食文化」をよく読んでいる人はすぐわかったのではないでしょうか。
書名を覚えてなくても、飾り切りができるものが蒲鉾か大根までは搾りこめるのではないでしょうか。
ただし、絵から大根を推定するのは難しいと思いますし、「江戸の食文化」には多くの料理書名がでてきて、覚えるのが大変だったと思いますので、中級としました。
答えは「大根」です。
5、「吸い物」と「汁」の違いはどんなことか?(初級レベル)
これは、「江戸の食文化」64ページに、そのまま書かれています。
「江戸の食文化」をよく読んでいればやさしい問題ですので初級レベルとしました。
正解は、酒肴として出すのが「吸い物」、食事に添えるのが「汁」です。
6、「引き裂き箸」と呼ばれていた割箸が必ず添えられていた料理は何か? (中級レベル)
正解は、鰻丼です。
鰻丼は大久保今助が考案したということは書いてあることが多いのですが、これに付随して「引き裂き箸」について触れている本もありますので、知っているひともかなりいると思います。
しかし、私が紹介した本で触れていたものがなかったようですので、中級レベルにしました。
問題文の中にも書いてある通り守貞謾稿の鰻飯の項には次のように書いてありますので、岩波新書「近世風俗志(守貞謾稿)一」の212ページをお時間のある方は見てください。
「必ず引き裂き箸を添ふるなり。この箸、文政以来此より、三都とも始め用ふ」
7、「江戸甘味噌」と並んで人気のあった味噌を作っていた藩はどこか?(初級レベル)
正解は「仙台藩」です
江戸甘味噌と仙台味噌については、「江戸の食文化」108ページに詳しく書かれています。従って、初級レベルとしました。
問題文の中に出ていた品川の「八木合名会社仙台味噌醸造所」のほか、春の毎日文化センターの老舗めぐりでご案内した浅草の「万久味噌店」、秋の文京学院大学の「大江戸老舗物語」でご案内した神田明神前の「三河屋綾部商店」でも仙台味噌を購入できます。
近くに行かれたら購入して味わってみるのもよいと思います。
食べなれた信州味噌とは違う美味しさがあってお勧めです。