人気ブログランキング | 話題のタグを見る
「高杉晋作」(池宮彰一郎著)を読む
 年末休暇に入って、池宮彰一郎氏著の「高杉晋作」を読みました。
 そこで、今日は、池宮彰一郎氏著の「高杉晋作」について書いてみます。
 「高杉晋作」(池宮彰一郎著)を読む_c0187004_10165844.jpg高杉晋作については、司馬遼太郎氏が描いた「世に棲む日日」が大変有名です。
 そして、先日三好徹氏の「高杉晋作」も紹介しました。
 この池宮彰一郎氏の「高杉晋作」もすごくおもしろい小説です。
 しかし、読んでいる途中で奇異に感じたことは、薩摩が権力欲が強いと何度も強調されていることでした。
 
 こうした描き方は、池宮彰一郎氏が意図的に描いたものだということがあとがきを読んでわかりました。

 池宮彰一郎氏の意図は、「あとがき」にはっきりと書かれていました。
 もちろん、「あとがき」ですから最後に読みましたが・・・

 維新の志士を英雄として扱うと、人物像が明確に伝わらない憾みが残ることは否めない。
 殊に作者の立脚点が那辺にあるかによって、人物評価が多少傾くのは致し方のない事実である。
 薩摩、特に西郷隆盛を維新最大の英雄とした小説があった。また、土佐、坂本龍馬に維新回転の最高指導者とした小説もある。それらは、薩摩、あるいは土佐の観点から維新史を展望した。が、ふしぎなことに、長州から維新史を眺めた小説は銖錙(しゅし)である。(*銖錙とは「わずか」という意味です。)
 筆者は、長州の高杉晋作の立場から、維新革命を直視しようと思い、筆を執った。


 「高杉晋作」(池宮彰一郎著)を読む_c0187004_10173897.jpg この小説の流れは、まさにこの通りです。
 ですから、高杉晋作は維新回転を成し遂げた革命家として描かれています。
 それに対して、西郷隆盛については「西郷は権力欲が人一倍強く、とかく小ずるい策を弄する。それは私生活とは対照的な面であった」と書いてあり、坂本龍馬については、「坂本には革命の起爆力はない。(中略)革命に必須の人間に相違ないが、百人の坂本龍馬がいても革命発起には至らない」としています。
 こうした幕末有名人の評価について異論のある人もいるとは思いますし、私も賛成するわけではありませんが、池宮彰一郎氏の人物評価は、これはこれでおもしろいと思います。

 池宮一朗彰氏のおもしろい所は、高杉晋作の有名な逸話を史実ではないと言い切っていることです。
 例えば、文久3年の正月5日に、高杉晋作は、伊藤俊輔、山尾庸三、白井小助、堀真五郎を連れて、小塚原に埋葬されていた吉田松陰の遺骸を、世田谷の若林に改葬しました。
 その途中、上野を通過した際、将軍しか通れない三枚橋の真ん中の橋を押し渡ったと言われています。
 このエピソードは、司馬遼太郎氏の「世に棲む日日」や三好徹氏の「高杉晋作」にも描かれている有名なエピソードです。
 池宮彰一郎氏は、このエピソードは史料にはないと言い切っています。
 そして、高杉晋作は、吉田松陰の改葬後、京都に上る時に、箱根の関所破りをしたというエピソードもかなり有名です。
 池宮彰一郎氏は、「これも史実にない。この頃の晋作に関する俗説は、後世数多く流布された」と書いています。
 また、高杉晋作は数多くの都々逸を作ったといわれています。最も有名なものが次の都々逸です。
 三千世界の烏を殺し
 ぬしと朝寝がしてみたい

 これについても、池宮彰一郎氏は、「大方は訛伝(かでん)であろうと思われる」と書いています。(*「訛伝」とは「まちがった言い伝え」という意味です。)
 これもすごいと思います。

 こうしたトーンで描かれているので、全体的に歯切れの良さが感じられます。
 

 そのほか、おもしろかったのは、野村望東尼(もとに)の描き方です。
 野村望東尼は、高杉晋作の最期を看取り、高杉晋作の辞世の歌を補作したことで有名です。
 池宮彰一郎氏は、高杉晋作と野村望東尼との間に愛情が芽生えていたと描いています。
 そして、有名な高杉晋作の辞世の句について、多くは、まさに亡くなる直前に作られたと書かれています。
 しかし、高宮彰一郎氏は、慶応2年に、高杉晋作が、野村望東尼を幽閉されていた姫島から救い出し三田尻まで送り届けた時に、野村望東尼に渡しておいたと描いています。
 こうした描き方は、思いがけない描き方なので、驚くとともに小説の描き方として新鮮に感じました。

 野村望東尼との愛情は創作のような気がします。
 しかし、辞世の歌については、高杉晋作がなくなる一年前に作られたという説も確かにあるようです。
 読み始めれば、あっという間に読むことができるおもしろい本でした。




by wheatbaku | 2014-12-29 10:13

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 04月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
ブログジャンル
歴史
日々の出来事