初卯(江戸の祭礼歳事)
 今日は、「初卯」について書きます。

 「初卯」というのは聞きなれない言葉だと思いますが、「年が明けて初めての卯の日」ということです。

 東都歳事記」の正月の項を読むと、「甲子日」「寅日」「己巳待」「午日」「初申日」「庚申日」「酉日」「亥日」と十二支に関係する行事がずらりと並んで説明されています。
 これは、「寅日」には「毘沙門天」等それぞれの日に関係する神仏をお参りする行事について説明しているものです。

 この中で、「江戸の歳事」関連の参考書の多くに解説されているのが「初卯」です。
 江戸っ子たちは、正月初の卯の日には、江戸では亀戸の妙義社へ参詣し、卯の札を授かりました。
 東都歳事記には次のように書かれています。
c0187004_1082133.jpg 卯日 亀戸妙義参 天満宮の境内にあり、毎月卯の日を縁日とす。正月は初卯詣と号し参詣多く、南は両国より割下水辺、北は浅草大川橋より柳島の土手辺りに満つ。又二の卯、三の卯もこれに同じ。
詣人神符を受けて髻(もとどり)に挟てかへる。餅或は土を以て団子とし、五彩に色どり、大なる柳につけて繭玉と号(なづ)け售(か)ふ。又天保二卯年より卯杖卯槌を鬻(ひさ)ぐ

 そして、右上写真のように、その賑わいが、絵に描かれています。

c0187004_1084068.jpg 東都歳事記に書かれている「亀戸妙義社」現在も亀戸天神の境内に鎮座しています。
 ただし現在は、「御嶽(みたけ)神社」と名前が変わっています。

 社殿脇に設置された説明板には次のように書かれています。
ご祭神  
 比叡山延暦寺第13代座主 法性棒専意僧正
御社殿  
 寛文9年(1669)11月21日に九州大宰府御嶽山より勧請し建立され古くは亀戸妙義社とも号されました。
由緒  
 法性坊は、道真公の教学、御祈の師で、道真公の師で、(中略) 道真公との御関係は殊に深く、よって当宮境内に奉祀されました。
 つまり、亀戸天神は菅原道真をお祀りしていて、亀戸妙義社(現在は御嶽神社)は、菅原道真の先生をお祀りしているということになります。

c0187004_109261.jpg なぜ、この妙義社の縁日が「卯の日」となったかについても、説明板には説明がされています。

 (法性坊は)天慶3年(930)2月の卯日の卯の刻に亡くなられことから、春の陽気を向える「卯の神」と啓仰され、以来月毎の卯日はもとより、特に正月の卯日は、陽気を迎えるはじめとして「卯槌」「卯の神札」を求め、福徳、才智、愛敬を願、除病、延命を祈りました。

 これで、なぜ妙義社の縁日が「卯の日」で、「初卯」がにぎわったかがわかると思います。

 現在も、亀戸天神では、「初卯祭」が行われています。現在は繭玉はないようですが、「卯槌(うづち)」「卯の神札(おふだ))が配られています。
 2015年の「初卯」は1月3日でしたので、もう過去になってしまいましたが、「二の卯」、「三の卯」にも、「卯槌(うづち)」「卯の神札(おふだ)が配られます。
 「二の卯」は1月15日、「三の卯」は1月27日です。こちらはまだ間に合いますので、ご興味のある方は、亀戸天神境内の御嶽神社をお参りし、「卯槌」や「卯の神札」を授かってはいかがでしょうか。
 ただし、亀戸天神のお話では「数に限りがありますので。お早目に御参拝ください」ということでした。
c0187004_10222585.jpg卯槌
東都歳事記にも卯槌が出てきますので、江戸時代から売られていたものと思われます。


c0187004_10224133.jpg卯の神札

東都歳事記に「髻(もとどり)に挟てかへる」と書いてあります。
それを詠んだ川柳もあります。
十二文串髪へさす初卯の日
初卯かへりのかうべにも神やどり

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by wheatbaku | 2015-01-07 10:09 | 江戸の祭礼歳事

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