五條天神社で節分に行われる神事は「うけらの神事」と呼ばれています。
五條天神社は大己貴命(大国主命おおくにのぬしのみことの本名)と少彦名命(すくなひこなのみこと)を主神として祀る神社です。
大己貴命、少彦名命は、日本で古くから医薬の祖として崇められ薬祖神とも呼ばれています。
五條天神社は、日本武尊が東夷征伐の為、上野忍が岡を通った際に、薬祖神(上記の二柱)の御加護を頂いた事を感謝して、この地に両神をお祀りしたとされています。
創建以来約1900年が経つそうです。
寛永18年に菅原道真も合祀されたので、下谷天満宮とも云われました。
そのため、1月25日の初天神には鷽替え神事も行われます。
この五條天神社で毎年2月3日節分に行われるのが「うけらの神事」で「うけら餅の神事」とも呼ばれるそうです。
午後3時から神事が始まりました。
最初に、修祓から始まる節分祭りが行われ、年男・年女の玉串奉奠が行われました。
その後に、「方相氏(ほうぞうし)」が現れます。
「方相氏」は四つの金目を持ち鬼を退治する役です。
「方相氏」は、四方に矢を放つ形を取って浄めます。
四方が浄め終わると、蟇目式(ひきめしき)が行われます。
蟇目式は、宮司が弓矢で氏子町内の鬼や病を払う儀式です。
蟇目式の蟇目とは、矢の先につけた蟇目鏑(ひきめかぶら)からきている言葉だと思われますが、詳しいことはわかりません。
蟇目式が終わると突然鳥居の方が騒がしくなりました。
振り返ると赤鬼と青鬼が現れ、 黄色の御幣をもって、人ごみの中に立っていました。
そして、赤鬼と青鬼は、集まった人々の間で暴れまわりながら、徐々に社殿に向かってきました。
群衆は大騒ぎです。特に子供たちを見つけるとそばに寄っていきますが、子供たちはびっくりしていました。
そして、仮設舞台に上ります。
仮説舞台の上でも暴れまわり、そしてついには社殿に押し入ろうとします。
しかし、その青鬼と赤鬼の前に、方相氏が立ちはだかります。
赤鬼と青鬼は、何度も押し入ろうとしますが、その度に押し返されます。
赤鬼・青鬼が押し入るのをあきらめたところで、氏子総代が勤める副斎主が現れ、赤鬼・青鬼との問答が始まります。
赤鬼は病鬼であると言い、青鬼は災鬼であり、災いをなすためにやってきたと言います。
それに対して副斎主は神の力の強さを高々と唱えます。
それにより、赤鬼・青鬼が恐れ入り退散していきます。
その後、年男・年女による豆まきが始まります。
豆まきが始まると参集していた人々は一斉に豆をとろうと殺到しました。
「うけらの神事」は初めて見ましたが、赤鬼・青鬼が現れて、実に見応えのある楽しい神事でした。
もう一度見てみたくなる神事です。
次回に来るときには、ビデオで撮影できるようにしようとも思いました。
五條天神社では「おけら餅」の授与もありますので、いただいてきました。
中には「おけら」と「もち」が入っています。
「おけら」は焚いて煙により悪鬼を払い、おもちは焼いて食べます。
これにより、今年一年病気にかからず健康でいられおまじないです。
「おけら」も焚いてみましたが、薬草の香がして、今年一年健康でいられそうに感じられました。
良いお参りをしたと感じました。
「うけら」は「おけら」とも言い、キク科の植物で、薬草として利用されます。
「おけら」の根茎を乾燥させたものを「白朮(びゃくじゅつ)」というそうです。
この「白朮(びゃくじゅつ)」は、正月に飲む「屠蘇散」にも入れられることが多いようです。