「東都歳事記」の2月25日の項には次のように書かれています。
今日より3月2日迄雛人形同調度の市立 街上に仮屋を補理(しつら)ひ、雛人形諸器物に至る迄、金玉を鏤(ちりば)め造りて商う。是を求る人昼夜大路に満てり。中にも十軒店を繁花の第一とす。
雛人形店といえば、日本橋の十軒店がなんといっても有名です。
十軒店跡には、中央区教育委員会の建てた説明板があります。(右写真)
しかし、雛市は、十軒店のほかにも開かれたようです。
東都歳事記には、十軒店のほかに、尾張町、浅草茅町、池の端仲町、牛込神楽坂上、麹町3丁目、芝神明前などの雛人形市が載っています。
しかし、何といっても有名なのが十軒店です。
江戸名所図会には、挿絵が載っています。
左のページに並んでいる店は、瓦屋根・畳敷きのしっかりとした店構えです。
こちらは、普通の店舗です。
これに対して右ページにある手前側にある店はよしず張りの仮設の店が並んでいます。
このような露店が、道路の真ん中に二列にわたって並んでいたようです。
粗末な店が並んでいることから、次のような川柳もあります。
草庵の 一町続く 雛の市
賤が家(しずがや)に 公のまします 通町
「絵本江戸風俗往来」では、
十軒店雛人形市 十軒店市は往還左右へ床店をしつらうこと、一丁余の間なり。これを中店という。されば両側の常の店並、同じく中店と都合四側の店並となり、その中間を公道とす。
五月端午の幟・兜人形市も同じ店並なり。雛は毎年2月25日より始め、3月2日に終わる。
と書かれています。
雛人形市の様子は、「熈代勝覧」にも描かれています。
確かに、常設の店舗の前に、仮の店舗が並んでいますね。