守貞謾稿には、富くじについて詳しく書かれていますので、今日は、その三回目です。
守貞謾稿には、富くじの当選者が当選金すべてを手に入れられないと書かれています。
突き止め千両を得る者より、その一分百金を修補の料と号して債主に止め、また百両を札屋に頒ち、その他諸費と号して四、五十両を除き、千両富その実を得る所大略七百金なり。
平の当りに至るまで各これに准ず。
当選金の3割は、諸々の理由をつけて差っ引かれて、当選者に手に渡るのは7割であると書いてあります。
まず1割は、富興行を催す寺社が修補料として受け取ります。
そして1割は、札屋が1割を取り、さらに諸費と名付けて1割が差っ引かれます。
そうしたことから、当選者が受け取れるのは7割になってしまうのです。
これは、突き止めの千両の当選者も、「平」の少額の当選者も一律であると書いてあります。
富くじの札一枚の値段は金一分と高額でしたので、貧しい人たちは、おいそれと買えません。
そこで、貧しい人たちも買える工夫がされるようになります。
それについても守貞謾稿に書かれています。
また割札と号して、本札を札屋に止め、一札二頒あるいは四頒等の仮札をもって頒ち売るもあり。二頒を半割札、四頒を四人割と云う
これは、一枚の富札を複数人数で購入する方法です。この場合、本物の富札は札屋が預かっていて、仮の札を購入者が持っている方法です。
二分割する場合は「半割」、四分割する場合は、「四人割」と言いました。
当選の富札を当てる「第付」についても書いてあります。
第付とて一の富の出番を当て物にして、裡店(うらだな)女房・酒屋下児まで掠め銭を一銭二せん賭して当て物す。
一文は八文にして取る割合故、大欲の輩大金をもって賭するもあり。
「第付」というのは、一の富の当選番号を当てるものと書いてあります。
一文で購入できて、当たると八文が戻ってくるという割合であるため、裏店のおかみさんや小さな商店の小僧まで、これを購入し、大金を出して購入するものもいたと書いてあります。
この「第付」を売り歩く人は、当初は「富の出番」と言いながら売っていましたが、これが禁止されたので、「於波奈志々(おはなし、おはなし)」と言って売り歩いたと書いてあります。
守貞謾稿に書かれている「富」の話は、これで終わりますが、江戸検を受けられる方は、近世風俗志(守貞謾稿)を読んでおくとよいと思います。