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目黒の滝壺(願懸重宝記③ 江戸の祭礼と歳事)

 「江戸神仏願懸重宝記」に載っている神仏のほとんどが小さな神仏です。

 しかし、なかには滝の水が願懸けの対象になったものもあります。

 それが目黒のお不動様(正式には瀧泉寺)の境内にある「目黒の滝壺」です。


 目黒のお不動様は多くの方がご存知だと思います。

目黒の滝壺(願懸重宝記③ 江戸の祭礼と歳事)_c0187004_09464792.jpg 目黒のお不動様は、泰叡山瀧泉寺といいますが、寺伝によると、大同3年(808)慈覚大師円仁が下野国から比叡山に赴く途中に不動明王を安置して創建したという古い歴史を持つお寺です。
 五色(目黒、目白、目青、目赤、目黄)不動の一つとしても知られています。

 また、江戸検を受検される方は、「江戸三冨」の一つに数えられていて、江戸時代には「富くじ」でも有名であったということをご存知の方も多いと思います。

目黒の滝壺(願懸重宝記③ 江戸の祭礼と歳事)_c0187004_09470054.jpg この目黒のお不動様の山門(右上写真)を入ると広い広場となっていて、本堂(右写真)へと登る石段下の左手に池があり、2体の龍の口から水が吐き出されています。

 これが「独鈷の滝」と呼ばれている滝です。(右下写真参照)

 この滝は、慈覚大師円仁が堂塔建設の敷地を占って、御自身が持っていた独鈷(とっこ)を投げたところ、忽ち滝泉が湧き出したので之を「独鈷の滝(とっこのたき)」と名付けたと独鈷の滝の脇に設置されている説明板に書かれています。

 「江戸神仏願懸重宝記」によれば、この独鈷の滝の水が怪我除けの御利益があるというので願懸けの対象になりました。

目黒の滝壺(願懸重宝記③ 江戸の祭礼と歳事)_c0187004_09470928.jpg 目黒のお不動様は、五色不動の一つでもあり、関東36不動尊巡りの霊場でもあり、山の手七福神の一つでもありますので、個人的にも何回も参拝していますし、史跡案内でも案内したことがあります。

 しかし、独鈷の滝の水が怪我除けの御利益あるというのは、「江戸神仏願懸重宝記」を読んで初めて知りました。

 「江戸神仏願懸重宝記」はくずし字で書かれたものが出版されていますが翻刻されたものがないので、くずし字の読めない私には正確に読み解くことができませんが、概略は次のようです。

 子どもの月代を剃る際に、泣き叫んだりして、剃るのが難しい時に、目黒不動の滝壺の水を沸かして頭に塗り月代を剃ると驚くほどおとなしく剃れる。

 これは、お不動様の字の如く、「不動(うごかず)」ということからの信じられていることである。

 こんな感じだと思います。

 「独鈷の滝」については、江戸名所図会にも書かれています。

 独鈷の滝 当山の垢離場なり。往古承和14年(847)当寺開山慈覚大師入唐帰朝の後、関東へ下りたまひし頃、この地に至り独鈷杵をもてこの地を穿ち得たまふとぞ。つねに霊泉滔々として漲り落つ。炎天旱魃といへども涸るることなく、末は目黒一村の水田に引き用ふるといへり。昔は三口にわかれて湧出せしが、いまは二流となれり。

 現在も右上の写真で龍の口から流れているのが滝ですが、龍の頭が二つあるのでおわかりのように二流となって流れています。

目黒の滝壺(願懸重宝記③ 江戸の祭礼と歳事)_c0187004_09471684.jpgこの独鈷の滝の左手に小さなお堂がありますが、独鈷の滝を訪ねた際には一緒に拝観するとよいと思います。

このお堂が前不動堂(まえふどうどう)で東京都指定の文化財です。
 建立時期ははっきりしないようですが、江戸時代中期の建物です。

 ご本尊は不動明王立像で、庶民信仰の便を図ったものとも、本堂に祈願するための徳を積む修業の場であったともいわれているようです。



by wheatbaku | 2015-09-14 09:30 | 江戸の祭礼歳事

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
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