江戸検お役立ち(と自分では勝手に思っていますが、お役に立たないかも?)情報の続きで、今日は「旧国名を覚えよう」です。
この旧国名も、年号と同じように基礎知識の範疇にはいるもので、江戸検1級では、後記のようにしばしば出題されています。
そのため、江戸検1級を受ける方には、しっかり覚えましょうといっている事項です。
しかし、旧国名は68個もあるので、これもてこずっている人が多いように思います。
そこで、お役に立つかどうかわかりませんが、今日は旧国名を覚えるために参考になりそうな知識・情報を2点書いていきます。
1、まず1番目は、本土周辺の島です。
江戸時代には、大きな島が、それぞれ1つの国とされていました。
つまり、佐渡島、淡路島、隠岐島、対馬、壱岐島がそれぞれ「佐渡」「淡路」「隠岐」「対馬」「壱岐」という国になっています。
これを忘れると旧国名が68か国になりませんので、旧国名を覚えるにあたって、最初に覚えておくとよいと思います。
2、次に、「上野・下野」や「越前・越中・越後」などのように国名に「上・下」や「前・中・後」がついている国々です。
これらの国々は、元は一つであった国が数か国に分国された国です。
この国は、名前が似ていることもありますので、ひとまとめにして覚えると覚えやすいと思います。
これらの国は、都に近い国が「上」または「前」、遠い国に「下」または「後」が付けられています。
この類の国々はすべてで、22か国あり、最後に説明する「近江・遠江」を加えると24か国ありますので、それを順に書いていきます。
なお、国名の語源については諸説があるようですが、その中から国名を暗記するのに参考となるものを独断で選んで書いてあることをお断りしておきます。
①上野・下野
この2か国は、もとは「毛野(けぬ)の国」でした。それが「上野」と「下野」に分れました。
「毛」は「木」のことで「毛野」とは「草木の生い茂る土地」というのが通説だそうです。
この国々は東山道に属していますが、都に近い国が「上野」、遠い国が「下野」とされました。
②上総・下総・安房
この3か国は、もとは「総(ふさ)の国」でした。
これが「上総」と「下総」に分れました。
「総」とは「麻」のことだそうで、「麻が良く育った国」ということです。
その後、「安房」は「上総」から分国されました。
「安房」の「房」は「ふさ」と読めることから、「上総」「下総」の「総(ふさ)」と表記は異なりますが同語源だという説もあります
③越前・越中・越後・加賀・能登
この5か国は、元は「越(こし)の国」でした。
「坂を越えた土地」なので「越」と呼ばれたそうです。
それが、まず「越前、越中、越後」の3か国に分れました。
これらの国々は、北陸道に属していますが、都に近い国が「越前」、最も遠い国が「越後」、その間が「越中」とされました。
その後、加賀と能登が、越前から分かれました。
④丹波・丹後
丹波・丹後は、丹波という一つの国でした。
そのうち、都から遠い方を「丹後」として分国しました。
⑤備前、備中・備後・美作
これら4か国は、古代には「吉備国(きびのくに)」であったといわれています。
これが「備前、備中、備後」の3か国に分れました。
その後、「美作」が「備前」から分かれました。
⑥筑前・筑後
九州北部には古代には、「筑紫国」がありました。
「筑紫」の語源は「道が西の果てに尽きるところ」という意味です。
これが2か国に分れ、「筑前・筑後」となりました。
⑦豊前・豊後
これらは、もとは「豊(とよ)の国」でした。
「豊」とは「豊かな土地」という意味です。
これが2か国に分れ、「豊前・豊後」となりました。
⑧肥前・肥後
これらは、もとは「肥の国」でした。
「肥の国」は「火の国」で「阿蘇山や雲仙岳などの火山がある国」という意味です。
これが2か国に分れ、「肥前・肥後」となりました。
⑨近江・遠江
この2か国は、分国ではありませんが、国名の語源に縁がありますので、一緒に覚えるとよいと思います。
「近江(おうみ)」の語源は「近い淡湖(あわうみ)」です。
「淡湖」は淡水湖の琵琶湖をさしていて、琵琶湖のある国ということで「近江」となりました。
これに対して「遠江(とおとおみ)」は「遠い淡湖(あわうみ)」で、都から遠い淡水湖の浜名湖のある国という意味です。
以上により、①島が一つの国とされた5か国、②分国された22か国、それに③「近江・遠江」を加えて合計29か国が、今日のお話で比較的容易に覚えられると思うのですが、いかがでしょうか?
明日も、旧国名について書きます。
最後に旧国名に関する1級の過去問題を紹介しておきます。
1級では、年号と同じように記述問題も出題されています。
そのため1級を受検される方は、旧国名を覚えるだけでなく、漢字で書けることも必要となります。
第6回75問
江戸時代、武蔵国を武州、安房国を房州というように、国の名を通称で呼ぶ場合がありました。では、野州といえば、右の地図の(い)~(に)のどれでしょう?
(選択肢の地図は省略します。)
第5回91問
幕末の志士を多く輩出した長州藩は、長門国だけでなくその隣国にも領地がありました。その隣国の名前を、漢字2字で書いてください。