江戸検1級のお題「江戸の祭礼と歳事」関連の出題問題についてコメントして欲しいという要望がありましたので、私なりのコメントをしてみます。

まず、全体を通じての特徴点を私なりに書いてみます。
1、出典別にみると、参考図書「祭りだわっしょい! 江戸の祭礼と歳事」から13件 参考図書「東都歳事記」から2件、「江戸博覧強記」から2件、その他から3件という内訳です。
(1)参考図書「祭りだわっしょい! 江戸の祭礼と歳事」から13件出題されていますし、また難解であるので勉強しにくかったといえる「東都歳事記」を含めると15問出題されていて、参考図書からの出題割合が非常に高いと思います。
さらに公式テキスト『江戸博覧強記』からも2問出題されていて、これまで含めると17問にものぼります。
(2)以上より、参考図書やテキストを精読している人にとっては全体として易しかったのではないでしょうか。
2、出題分野別にみると次のようになっています。
年中行事 9件、天下祭 4件、
各地の祭 3件、開帳・相撲・流行神・守護神 各1件
(1)年中行事が非常に多く、年中行事が多いとは予想していましたが、9件も出題されていて、予想を上回る割合となっています。
(2)天下祭4問は妥当な割合ではないでしょうか
(3)各地の祭も出題されると予想していました。しかし、出題地域としては近畿地方以西を予想していましたが、中部地方が多いのには驚きました。
(4)出題される可能性が高いと予想していた第3章「江戸っ子の信心」は流行神1問が出題されただけでした。
これらは少し予想外ですが、年中行事からの出題が多かったため、結果として少なくなったのかもしれません。
また、「願懸け」・「厄災」などは内容が難しいテーマだったことや「稲荷」は適切な問題の作成が難しかったことなどが影響しているのかもしれません。
それでは、各問題について簡単にコメントします。
考図書「祭りだわっしょい! 江戸の祭礼と歳事」と公式テキスト「江戸博覧強記」から出題された問題については、本を読んでいただければわかると思いますので、出典ページを記載するに留めます。
また、難易度はあくまでも私の個人的な判断です。異論がある場合もあるかもしれませんがご了承ください。
【1】天下祭りの山車の行列で、先頭の「鶏」と2番目の「猿」の山車を出した町の組み合わせとして正しいものはどれか?
正解は「大伝馬町と南伝馬町」です。
「祭りだわっしょい!江戸の祭礼と歳事」のP17とP23の表を見ていただければわかります。
これは基礎的な知識を問う問題だと思いますので初級レベルです。
【2】神田祭の祭日9月15日が、家康にとってどのような慶事であったか?
正解は「関ヶ原の戦いでの勝利」です。
このことについては、私が知る限りでは、2つの本に書かれています。
その一つが、推奨図書となっている神田明神編著「神社の教え」で、もう一つは以前紹介したことのある三谷一馬著「江戸年中行事図図聚」(中公文庫)です。
「神社の教え」の場合は、P114に書かれています。
それによると、関ヶ原の戦いに臨むにあたって、徳川家康は神田明神に戦勝祈願しました。すると見事に戦いに勝利しました。しかも、勝利した日は9月15日、神田明神の例大祭の日でした。
これ以後、神田祭は縁起のよい祭りとして絶やすことなく執り行うよう命じられたといいます。
「江戸年中行事図聚」のP293には、関ヶ原の合戦の折、祭礼を遠慮すべきか伺いをたてると例年通り執行せよとの仰せがあり、9月15日の祭礼の最中に戦いに勝利し、徳川家康はこれを吉事の祭りとして断絶してはならないと命じた と書かれています。
これは上級レベルですね。
【3】山王祭の行列の江戸城への入城門と退城門の組み合わせとして正しいものはどれか?
正解は「入城門:半蔵門一退城門:竹橋門」です。
「祭りだわっしょい!江戸の祭礼と歳事」のP19をご覧ください。
山王祭についての基礎知識なので初級レベルです。
【4】神田祭の際、神田連雀町が出した山車人形「熊坂長範」は、源義経に滅ぼされたとされる平安時代の伝説的な盗賊をモデルにしていて、頭と目が動くからくりが自慢でした。熊坂を載せた山車には、天下祭りでの特別な約束事がありましたが、それは次のどれでしょう?
い)江戸城入城の際に、後ろ向きに入る
ろ)上覧所の前で、人形が将軍をきっと睨む
は)町奉行所の前では、布をかぶせて人形を隠す
に)祭礼行列の巡行終了と同時に、手足を縛る
これは、お題関連の中では、最も難しい問題だと思いましたので、問題文と選択肢の全文書いておきました。
正解は、「い)江戸城入城の際に、後ろ向きに入る」です。
このことは、明治以降に発刊された「風俗画報」に書かれていることまでは、わかりました。
しかし、風俗画報の現物を見るには国立国会図書館か明治大学図書館でないと閲覧できません。
現時点ではそこまで調査できていませんので、実際にどうかかれているのかは不明です。
ご興味があってお時間のある方、調べてみてください。
これはいうまでもなく上級レベルだと思います。
【5】徳川将軍家の正月行事で請西藩林家の歴代当主はどのような役割を勤めたか?
正解は「元日の「兎羹の儀」に用いる兎を献上した」です。
公式テキスト「江戸博覧強記」のP78をご覧ください。
これは初級レベルです。
【6】愛宕権現社の別当寺円福寺に入って奇妙な格好をした毘沙門天の使いが執り行なう「日光責め」とも呼ばれる儀式は何か?
正解は「強飯式(こうはんしき)」です。
「祭りだわっしょい!江戸の祭礼と歳事」のP126をご覧ください。
歌川広重の「名所江戸百景 芝愛宕山」を見ていただくと出題された絵を同じ格好をした毘沙門の使いが描かれていることがわかると思います。
これは参考図書を精読していればわかると思いますが、参考図書の挿絵とは違う絵が出題されていることを考慮して中級としておきます。
【7】上野寛永寺護国院では、正月3日に大黒天に参詣した際に受ける「御福の湯」は、どのようなものだったか?
正解は、「大黒天に供えた鏡餅を浸した湯」
東都歳事記正月3日の項に次のように書かれています。
大黒天の尊前に供ふる所の餅を湯に浸して、参詣の諸人にあたふ、これを大こくの湯または御福の湯といふ、これを飲めば福智を得るといへり
これは出典が「東都歳事記」ですし、あまり知られていない事項だと思いますので上級レベルだと思います。
【8】4月8日の「花祭り」で、参詣客は誕生仏にかける甘茶を寺で買って帰り、甘茶をどのように用いたのか?
正解は「墨を磨って呪文を書き、便所の虫除けにする」です。
「祭りだわっしょい!江戸の祭礼と歳事」のP132をご覧ください。
これは参考図書を精読している人はわかったことだと思いますが、あまり知られていないことで精読していない方には難しいと思いますので中級レベルだと思います。
【9】応仁の乱以降、多くの神事や勅使行列が中絶し、元禄7年(1694)に幕府の援助で復活した京都の祭りものは何か?
正解は「賀茂祭」です。
「祭りだわっしょい!江戸の祭礼と歳事」のP166をご覧ください。
これは、参考図書に書かれていることですし、加茂祭は有名なお祭りです。さらに夏検でも出題されていたお祭りですので、ちょっと厳しめですが初級レベルとしておきます。
【10】『東都歳事記』に[実に宇宙最第一の壮観ともいいつべし]と書かれた行事は何か?
正解は、「両国の打ち上げ花火」です。
東都歳事記5月28日でご確認ください。
これは、出典が「東都歳事記」ですが、両国の花火はよく知られている事柄ですので、中級レベルとします。
以上10問まで解説しましたが、量が多くなりましたので、残りは次回とさせていただきます。

