江戸検の結果が今週には通知されるようですが、受検された皆様はドキドキハラハラでお待ちのことだと思います。
私は、今週は20日の「江戸検受検者交流会」の準備であわただしい一週間になりますが、受検された皆様からの朗報が届くことを期待しながら過ごしたいと思っています。
「鬼平散歩in本所」が終わった後、しばらくぶりに余裕ができたので、「父子鷹」と「夢酔独言」を読むことができました。
最近は、江戸検や史跡散歩に関係する部分を拾い読みするという本の読み方が多くて、一冊の本を最初から最後まで読み切るということがないのですが、ひさしぶりに通読することができ、少し達成感を感じました。
「父子鷹」は、子母澤寛の小説で、主人公は勝海舟の父勝小吉です。
勝小吉は、男谷平蔵の3男として生まれ、7歳で41石の小禄旗本勝家の養子となります。
「父子鷹」は、小普請組の勝小吉が御番入りのため奔走する場面から物語が始まり、最後は、37歳で家督を勝海舟に譲った後、兄の男谷彦四郎が亡くなる時期までが描かれています。
「父子鷹」は、一言で言うと「痛快アクション時代小説」と呼ぶのがよいように私は思いました。
勝小吉は、旗本の枠にはまらない自由奔放な生き方をします。
一時は、自分をころして御番入りをめざした就職活動をしますが、就職が決まる直前に、まもなく同輩となるはずの人たちを喧嘩をして、一人を殺してしまいます。
このため、就職が実現せず、一生無役で終わります。
しかし、剣術の達人でもある小吉は、知り合いから依頼されたさまざまトラブルを納めていき、徐々に本所の顔役としてその存在感を高めていきます。
当初は敵対した人たちも、無欲な人柄に魅かれて、手下同様になります。
ヒーローはどんな困難にあって怪我をすることもなくうまく解決していくというパーターンでトラブルが解決していきますので、安心して小説を読んでいられます。
まるで「アクション映画」を観ているように物語が展開していきます。
これが子母澤寛の筆力だと思います。
勝小吉が解決するトラブルは数多くありますので、それをすべて紹介するわけにもいきませんので、一つだけ紹介します。
下巻のほうに書かれている話です。
勝小吉は、小吉自身が29歳、勝海舟が8歳の時から、旗本岡野孫一郎の屋敷内に住んでいました。
この岡野孫一郎家は大身旗本ですが、小吉が地借した当時は、岡野孫一郎のだらしなさもあって、貧窮のどん底にありました。いわゆる貧乏旗本でした。
そこで、勝小吉は家督を勝海舟に譲った38歳の時に、岡野家の立て直しを依頼されて、一肌脱ぐことになります。
小吉は、岡野家の知行所である摂津まで出かけて立て直しに必要な339両を調達しようとします。
それまでも、度々、岡野家から無理な要求を呑まされていた知行所の百姓たちは当然反抗し一揆直前という事態にまでなります。
しかし、小吉は様々な手段を講じて百姓たちを納得させ結果的には600両を調達します。
その手段のなかには、能勢の妙見様にお参りして雨を降らせてみせるというようなことまであります。
まさか、小吉の力で雨が降るとは思いませんが、「夢酔独言」には、そのように書いてあり、子母澤寛は、それに基づいて書いているものと思います。
「夢酔独言」を合せて読んでみると、「父子鷹」は「夢酔独言」に書かれているエピソードをかなり取り込んでいることがよくわかります。
その「夢酔独言」については、次回書きたいと思います。