人気ブログランキング | 話題のタグを見る
宝暦治水工事①(江戸の災害と復興)

「孤愁の岸」は大変感動した小説でした。

 しかし、読んでいていくつかの疑問がおきました。

 ①なぜ、宝暦年間まで、木曽三川の治水がほったらかしにされていたのか?

 ②なぜ、突然、薩摩藩が「お手伝い普請」を命じられたのか?

 ③なぜ、多くの藩士が割腹したのか?

 ④地元の百姓たちが、本当に非協力的だったのか?

宝暦治水工事①(江戸の災害と復興)_c0187004_22483083.jpg こうした疑問をいくらかでも解消したいと思って、「孤愁の岸」のほかに、いくつかの本を図書館から借りて読んでみました。

 それは、「宝暦治水・薩摩義士」(坂口達夫著)、「宝暦治水」(牛嶋正著)、「箱根用水と宝暦治水物語」(濱田進)です。

 これらを読んで、いくらかわかったことがあります。

 そこで、わかったことについて順に書いておきます。

 今日書くことは「なぜ宝暦年間まで、木曽三川の治水工事が本格的に行われなかったか」についてわかったことを書きます。

 これについては上記の3つの本に書いてありました。

 治水工事が行われなかった理由は幕府の政策だったようです。

 というのは、木曽三川を江戸を守る自然の防衛線にしようという考えがあったと書いてあります。

 尾張国の地形は東が高く西が低い「東高西低」の地形となっています。

 そのため、木曽御嶽付近で降った雨を集めた木曽川、飛騨地方に降った雨を集めた長良川、養老山系に降った雨を集めた揖斐川の流れがすべて西濃地域に集中してきます。

 そして、これが江戸からは遠い距離にありますが、上方から江戸が攻撃されるのを防衛するうえで重要な拠点と考えられたようです。

宝暦治水工事①(江戸の災害と復興)_c0187004_22483676.jpg そこで、木曽三川の東側に位置する地域に御三家の筆頭尾張藩を配置しました。

 そして、その尾張藩を洪水から守るために、木曽側の尾張藩側つまり東側に堤防を築きました。
 これが「御囲堤」と呼ばれる大堤防です。

 これに対して、木曽三川の西側の堤防は、尾張側の堤防より3尺低く築くことが不文律とされていました。

こうすることによって、どんな大洪水が起きても、尾張藩側が被害を受けることはなくくなりました。

この政策は尾張藩を守るだけでなく江戸を守る軍事上の備えの面ももっていたようです。

こうした政策のため、美濃・伊勢側の水田は大雨があれば常に被害を受けるようになるため、しばしば、木曽三川の本格的な治水工事を行うよう、幕府に陳情しました。
 しかし、当初の政策が家康の時代の決定であったこと、そして、美濃・伊勢側の堤防を強固なものにすれば、尾張藩の被害が生じることから幕府の尾張藩への気兼ね、そして尾張藩の反対がありました。
 こうしたことが、長いこと本格的な治水工事が行われなかった理由だと書いてあります。

こうした状況のため、「宝暦治水・薩摩義士」によれば、元禄14年(1701)の大洪水以降、宝暦治水工事が行われた宝暦4年(1854)までの53年間に41回もの水害が発生していたそうです。
 徳川幕府が開かれたころから数えれば、150年もの間、しっかりした治水工事が行われなかったので、数多くの洪水が発生していたものと思われます。

こうした状況の中で、宝暦3年(1753)に大水害が発生します。

ここで幕府はようやく重い腰をあげて、本格的な治水工事に着手することとなったと「宝暦治水」に書かれています。
 
 これで、長いこと本格的な治水工事が行われなかった事情がわかりました。





by wheatbaku | 2016-01-20 09:35 | 江戸の災害

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
以前の記事
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 04月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
ブログジャンル
歴史
日々の出来事