江戸検お題「幕末・維新を駆け抜けた人びと」の参考図書の続きです。
前回は、少しやさしくて幕末をあまりとくいとしない人でも取り組みやすい参考図書を紹介しましたが、今日は少しレベルの高い本を紹介します。
3、上級編(かなり知っている人用)
幕末・戊辰戦争について、かなり知っていて、それを深めていきたいというレベルの参考図書です。
「日本の歴史」シリーズは、出版当時、ベストセラーとなり、現在も出版されている名著と言ってよい本だと思います。
私が江戸検を受検した10年前にも読んで、基本的な幕末知識のベースとなっているものです。
この本では、開国から王政復古まで書かれていますが、戊辰戦争は次の「明治維新」(井上清著)に書かれていますので、ご注意ください。
松本健一氏は麗澤大学教授です。
「日本の歴史」シリーズと同じように通史ですが、ペリー来航から現代までを描いた「日本の近代」シリーズの第1巻です。
2012年に出版されたもので、ペリー来航から岩倉使節団出発までが書かれています。
佐々木克氏は京都大学名誉教授です。
ペリー来航から条約改正交渉まで書いた通史ですが、戊辰戦争については触れられていません。
下記の同じく佐々木克氏の「戊辰戦争」と合わせて読むと、今年のお題の範囲をカバーすることになります。
以上の参考図書は、幕末全体について書かれたものです。
戊辰戦争について書いた本を次に紹介します。
この本は、戊辰戦争についてだけ書いてあります。
「戦争の日本史」シリーズのうちの一冊ですので、軍事史の側面が強い本です。
そのため、兵器や兵站等についても触れられていますが、個々の戦いは軍事史ですので詳しく書かれています。
4、掘り下げ編(戊辰戦争論について論じている)
戊辰戦争については、その性格をめぐり戦前から論争があり、現在も論争が続いているそうです。
以下にあげる本は、その戊辰戦争論の論争の中心となっている本です。
そのため、論争をしている部分があり、そこが論争になっているのかということがわかります。
私自身は、そうした点を興味深く読みましたが、江戸検の受検対策としては戊辰戦争論の論争までは必要ないかもしれません。
『戊辰戦争 敗者の明治維新』(佐々木克著 中公新書)
前述の『幕末史』をかいた佐々木克氏が書いた本です。
佐々木克氏は秋田県出身ということから、奥羽列藩同盟の立場を重視した姿勢で書かれています。一例として「同盟軍」という言葉が使用されています。まさに副題の「敗者の明治維新」の通りです。
また、戊辰戦争の性格について言及している部分もあります。
前述の佐々木克氏『幕末史』とあわせて読むとかなりハイレベルの勉強ができると思います。
石井孝氏は東北大学教授などを歴任した研究者です。
この本は、1984年に発刊され、復刊されたものが現在販売されています。
この本は、原口清氏の『戊辰戦争』(塙書房)と佐々木克氏の『戊辰戦争』への批判として世に問うたとはしがきに書いてあります。
そのため、ところどころに前述の佐々木克氏への批判が書かれています。
しかし、そうした部分を除けば戊辰戦争の経緯についてかなり詳しく書いてあるので学べるところも数多くあります。
この際だから戊辰戦争について深く勉強したいという方にはおもしろい本だと思います。
以上2回にわたって江戸検今年のお題「幕末・維新を駆け抜けた人びと」の参考図書を紹介しましたが、一度手に取ってみて、ご自身の知識レベルに合わせた本をお選びください。