『華岡青洲の妻』読了しました。(江戸のヒロイン)
『華岡青洲の妻』読了しました。(江戸のヒロイン)


 華岡青洲は、世界で初めて全身麻酔下で乳がんの手術を行ったことで知られています。

 『華岡青洲の妻』は、この華岡青洲の妻・加恵を主人公とした小説です。

 華岡青洲が、全身麻酔に成功するためには、家族の献身的な協力があり、『華岡青洲の妻』は、その家族の協力の様子を中心に描いた小説です。

しかし、単なる成功談として描かれなく、妻加恵と姑於継との争いが底流として流れているのが、女流作家有吉佐和子さんらしい描き方だと思いました。

c0187004_12410737.jpg

この小説では、華岡青洲は脇役です。それは、小説の前半にまったく華岡青洲が現れないことでもわかります。

主人公は、タイトルの通り華岡多恵です。

華岡多恵は、紀州紀ノ川沿いの那賀郡市場村の名門妹背家から華岡家に嫁ぎました。

多恵が嫁いだ時、相手の華岡青洲(当時は雲平と名のっていた)は、京都に遊学したばかりで、華岡青洲のいない華岡家に、姑於継から望まれて嫁ぎました。

嫁いで3年後に、ついに雲平が京都から帰ってきます。

大喜びで雲平を迎える家族ですが、それまで加恵をかわいがってきた於継はなぜか加恵を排除しようとし、仲むつまじかった姑と嫁との間でいわゆる嫁姑の争いがはじまります。

 雲平が帰って4年後、青洲の妹於勝が乳癌に冒され、於勝は、青洲が実験を重ねていた麻酔を使っての外科手術を望みますが、青洲は手術を行わず、於勝はまもなくなくなりました。

 こうした中で、華岡青洲は、犬や猫を使っての実験を重ね、効果を高めていき、人体実験のレベルに到達します。

 そこで、姑於継と加恵は、自分の身を実験に使って欲しいと願い出ます。

最初に実験台となったのは於継ですが、青洲は母親の老齢を思い麻酔レベルの低い麻酔薬の実験に留めます。

一方、加恵は、自分こそが真の実験台になることを申出て、半年後、青洲は本当の意味での麻酔薬の実験を、加恵を使って行います。

加恵は、三日目に無事目を覚ましますが、麻酔薬の副作用は甚大で健康状態を取り戻すのに半月を要しました。

その後、加恵に対抗意識をもつ於継から強い申出があり、2回目の実験を行いますが、この時の麻酔レベルも本来の麻酔薬からは低いものでした。

一方、加恵は、1回目の実験から2年経った時期に、青洲の最終的な実験に自らを捧げます。

華岡青洲は、非常に迷った中で、通仙散と名づけられた麻酔薬の実験を決断します。

多恵の献身により、二度目の実験も成功しますが、2回の実験に自身を捧げた加恵は視力を失ってしまいました。

 視力を失った多恵は2人目の子供をみごもります。なお、一人目の女の子は、幼くしてなくなっています。

 この子供は無事出産しますが、視力を失った加恵にかわり、嫁に行かず華岡家を支えていた華岡青洲の妹小陸が子育てします。

 しかし、この小陸も乳がんにより亡くなります。

 

 華岡青洲の母と妻の献身により完成した通仙散を使用し、青洲の妹2人の命を奪った乳がんの摘出手術に成功したのは文化元年(180)のことです。

 『華岡青洲の妻』は、華岡青洲という医者を援けた母於継と妻多恵の献身的努力の背景には、華岡青洲の愛を奪い合おうという嫁姑との間の対抗心があるという有吉佐和子さんの視点は大変面白いと思いました。

 また、多恵と於継だけの献身でなく、青洲の妹たちの献身もあったことにも注目している有吉佐和子さんの眼力がすばらしいと思います。

 まさに女性の視点にたった小説であるといえると思います。



[PR]
by wheatbaku | 2018-04-10 14:54 | Trackback
トラックバックURL : https://wheatbaku.exblog.jp/tb/29425275
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。

江戸や江戸検定についてに気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
プロフィールを見る
画像一覧
以前の記事
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
最新のコメント
ツユクサさん 江戸城散..
by wheatbaku at 12:53
獏様 江戸城散策、お疲..
by ツユクサ at 08:26
宮越さん コメントあり..
by wheatbaku at 11:42
今回のブログで、霊厳寺が..
by 宮越重遠 at 10:51
やぶひびさん 本妙寺は..
by wheatbaku at 13:05
「江戸から東京へ1」を図..
by やぶひび at 09:30
ツユクサさん 土曜日は..
by wheatbaku at 21:00
獏さん 案内お疲れ様で..
by ツユクサ at 11:10
小ツルさん 「むさしあ..
by wheatbaku at 09:50
バクさま、加州そうせい公..
by 鶴ヶ島の小ツル at 16:57
加州そうせい公様 私も..
by wheatbaku at 07:34
バクさん 昨日の江戸楽..
by 加州そうせい公 at 17:31
mikawaさん 先日..
by wheatbaku at 12:55
宮越さん コメントあり..
by wheatbaku at 09:03
宮越さんからコメントをい..
by wheatbaku at 09:00
mikawaです。先日は..
by mikawa ケンイチ at 08:17
ツルさん 名古屋に住ん..
by wheatbaku at 16:18
獏さま ははあ、あの石..
by 鶴ヶ島の小ツル at 15:20
やぶひびさん NHKB..
by wheatbaku at 17:54
今夜3/3.20:00~..
by やぶひび at 12:49
最新のトラックバック
各合戦の動員人数について..
from Coffee, Cigare..
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
再出発が始まる
from 哲学はなぜ間違うのか
穴八幡宮
from Coffee, Cigare..
風景印  28.4.30..
from としちゃんの風景印・郵趣日誌
山王日枝神社@溜池山王
from たび☆めし☆うま BLOG
浮世絵の誕生・浮世絵の歴..
from dezire_photo &..
小網神社@人形町
from たび☆めし☆うま BLOG
お気に入りブログ
江戸・東京ときどきロンドン
ファン
ブログジャンル
歴史