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金山寺味噌で有名な興国寺(醤油発祥の地①)

金山寺味噌で有名な興国寺(醤油発祥の地①)


 先週、和歌山県の湯浅町・広川(ひろがわ)町に行ってきました。今回のテーマは、「醤油」と「浜口梧陵」です。二つの町はともに「きのくに線」の湯浅駅を最寄り駅とする隣どうしの町です。新大阪駅から湯浅まで特急くろしおを利用して約1時間30分で行くことができました。予想外に近いという印象です。
 
 今日は、まず醤油の話からしていきたいと思います。

 醤油の由来について、ほとんどの本が、紀伊由良の興国寺の開山覚心が宋から径山寺(きんざんじ)味噌の製法を日本に伝え、径山寺味噌の底にたまった汁から醤油が発明されたとしています。

 そこで、醤油発祥に関係した興国寺は、湯浅町の近くにある由良町にあります。その興国寺も訪ねてきましたので、興国寺からご紹介します。

 興国寺は、醤油発祥の地湯浅町の隣にある由良町にある臨済宗のお寺です。(下写真は山門です。)

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 紀伊由良駅から山門(上写真)までは徒歩10分の距離にあります。
 行く前に興国寺に問い合わせた際にはタクシーが便利ということでしたので、紀伊由良駅からタクシーで行きましたが、タクシーの運転手の話では多くの参拝者が歩いていくとのことです。帰りは歩きましたが、山門からは10分で到着しました。ただし、参道が長いため、法堂(はっとう:本堂に当るお堂)からは15分くらいはかかると思います。なお、駅からお寺まではフラットですが、道路わきにある山門をくぐると参道は少し登り道となります。

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 さて、興国寺ですが、そもそも興国寺は、鎌倉幕府三代将軍源実朝の菩提を弔うために、葛山五郎景倫という武士が出家し願性と名乗り、鎌倉時代前期の安貞元年(1227)に建てられたもので、当時は「西方寺」として称していました。

のちに心地覚心(法燈国師)を住職に迎え、宗旨を臨済宗に改め、大いに栄えました。

 心地覚心(法燈国師)は建長元年(1249)中国・宋に渡り、宋で禅を極めた後、建長6年(1254)に帰国し、後に、興国寺(当時は西方寺)の住職に迎えられました。

 心地覚心(法燈国師)は、永仁6年(1298)に亡くなりましたが、その後に国師号を授かり、興国元年(1340)に、南朝の後村上天皇から興国寺の寺号を賜り、それ以降興国寺と呼ばれるようになりました。(下写真は法堂です)

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 元号を寺号としているお寺は、私が知る限りは延暦寺、仁和寺、建長寺、寛永寺の四ヶ寺で、いずれも錚々たる有名寺院ですが、この四ヶ寺に新たに興国寺が加わることになります。

さて、心地覚心(法燈国師)は、入宋した際、径(金)山寺味噌の製造を習得し、その製法を日本に伝えました。

それが、広まり、醤油の発明ということになるわけですが、興国寺は、金山寺味噌発祥の地であることから、興国寺の売店では、金山寺味噌を販売しています。(下写真は売店です。お坊さんが販売してくれます)

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売店では、その歴史にちなみ、金山寺味噌のほか、湯浅の老舗醤油屋角長の醤油や天狗の面なども販売されています。

 興国寺で販売している金山寺味噌は、興国寺で製造しているものではなく、御坊のというメーカーが製造したものですが、興国寺と銘打ってあるものは、興国寺でしか手に入りません。そこで興国寺ブランドの金山寺味噌を買ってきました。包装紙には「紀伊由良 開山興国寺」と書かれています。

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 この金山寺味噌から、醤油が発明されたわけですが、その話は次回にして、興国寺は、金山寺味噌発祥の地であるだけでなく、日本における尺八発祥の地でもあり、天狗でも有名ですので、そちらの話を書いておきます。

心地覚心(法燈国師)は宋での修行中に尺八を学び、帰国の際には名手4人を伴い帰国しました。これが日本における尺八のはじまりです。

時代劇でよく深編み笠の虚無僧が尺八を演奏しながら旅する場面がでてきますが、虚無僧は普化宗に属しています。日本における普化宗は、心地覚心(法燈国師)の孫弟子である金先(こんせん)が広めました。普化宗は、明治になって廃宗となりましたが、興国寺は、いまでも、尺八を演奏する人たちの間で高い地位を保っているそうです。(下写真は、開山堂からみた興国寺法堂方向です。)

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さらに、興国寺は、天狗でも有名です。昔、本堂などが火災に見舞われた後、天狗が現れ一夜にして寺を建て直したという伝説が残されています。

その伝説にちなんで、法堂裏に天狗堂があります。

法堂の裏にまわり、石段を登っていくと、天狗堂が現れ、天狗堂のなかに、長さ2.4m、幅2.7㎡の巨大なお面が祭られています。(下写真)

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興国寺では、毎年1月の成人の日に行われる天狗祭りが行われ、中門下の広場(下写真の右手)で天狗の舞が披露されます。

大天狗を中心にして、中天狗たちは、大きなノコギリやノミ、木槌などの大工道具を手にし、お堂を建設する様子が表現され、小天狗は、棒を持って、お堂の建設に協力する踊りのようです。

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 天狗堂の中の天狗の面の前に、天狗命根石(てんぐめいこんせき)という岩が飾られています。

そばに建てられている説明板によれば、天狗命根石は、地球創世記のころ、地核の噴出による火山岩からできた世界最大の大きさを誇る貴い石で、中には数億年前の水が溜まっているのだそうです。

そして、石をなでながらお願いすると願い事がかなうとも書かれています。

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醤油のもととなった金山寺味噌で有名な興国寺は、金山寺味噌以外にもいろいろな見どころがありました。 境内には人影はありませんでしたが、非常に境内が掃き清められていて、まさに静寂のなかでお参りができ、非常に良い気分になりました。 

 下赤印が興国寺です。




by wheatbaku | 2019-04-28 21:51

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