一之江名主屋敷(新江戸百景めぐり①)
江戸検の今年のお題は「新江戸百景巡り」です。そして、既に参考図書「新江戸百景巡り」も発売されています。(下写真)熱心な人は、もう購入されて読み始めていることと思います。
「新江戸百景巡り」に取り上げられている場所を私はすでに訪ねていますが、江戸の面影が残っている場所が多く、訪ねてみると江戸の雰囲気が感じられる場所が多いので、読者の皆様も訪ねてみると良いと思います。
「新江戸百景」を訪ねる人や江戸検を受検される人の参考になるように、「新江戸百景」を順不動になりますが、適宜、ご案内していこうと思います。
その最初として、今日は一之江名主屋敷をご案内します。「新江戸百景巡り」では第43景(P91)になります。
一之江名主屋敷を知っている人は、江戸検を受検した人でも少ないと思います。先日、江戸検同期合格者の会「伴四郎会」がありましたが、その席でも、一之江名主屋敷を知っている人は一人もいませんでした。
一之江名主屋敷は、江戸川区春江町にあります。最寄駅は、都営地下鉄新宿線瑞江駅となります。瑞江駅から徒歩15分かかります。 瑞江駅からの路線バスもありますので、バスを利用する方法もあります。
一之江名主屋敷は、江戸時代はじめに、一之江新田を開発し、元禄年間以降一之江新田の名主をつとめてきた田島家の屋敷です。
平成23年から江戸川区の所有となっています。
名主屋敷の周辺は、宅地化されていて、一般住宅が建ち並んでいますので、名主屋敷は、約2000坪の広さがあり、長屋門や主屋のほか、周囲には屋敷林や屋敷畑さらに空堀まで残されていて、江戸時代の土豪屋敷にタイムトリップしたように感じます。
まず、屋敷の敷地に入ると、南東にある立派な長屋門が迎えてくれます。(最上段写真)
主屋と同じく江戸後期に建てられたものと推定されています。
長屋門をくぐると正面に主屋があります。この主屋は安永年間(1772-1780)に再建されたものです。
主屋は、玄関と座敷・土間をそなえた茅葺の曲り家となっています。主屋は、住まい部分と土間の部分に大きく分けられ、住まい部分は。畳の座敷と板の間がありました。上写真が全体写真ですが、順に、玄関、屋敷内、土間の写真をみてください。
玄関。主屋の東南隅にあり、式台がついています。なお、名主屋敷に入館するための受付は玄関ではなく、土間の部分にありますので、訪問する際にはご注意ください。
土間。土間の先に受付があります。写真の中央にある太い柱が大黒柱ですが、見ごたえがあります。
土間の天井には、洪水に備えた船が保管されていました。
板の間。受付から板の間の部分を撮影したものです。
主屋の南側には庭園があります。名主屋敷の庭園は江戸時代の後期に整備された回遊式庭園と考えられていて、その当時の姿に復元されています。
主屋の西側から西北にかけては、うっそうとした屋敷林があります。屋敷林は、冬の北風を防ぐとともに燃料や肥料となる木の枝や葉っぱが採取されていました。その屋敷林には屋敷神があり、お稲荷様が祀られています。(下写真)
屋敷の北側には展示館も整備されています。その展示館には、主屋の模型もありました。下写真の模型は、主屋を南側からみたものです。手前が玄関に通じる表の座敷となります。
屋敷林を通って、資料館に行くと途中に、細い溝がありました。現在はコンクリートの蓋がされた水路が通っていますが、これが屋敷の周囲に築かれていた堀の跡だそうです。
今回の写真をみていただいてお分かりになると思いますが、23区内にあるとは全く感じられません。建物はもちろんのこと屋敷の周辺も含めて江戸時代の名主屋敷の姿がどんな雰囲気であるかがよくわかります。一見の価値があると思います。
赤印が一之江名主屋敷です。いなげやの西側が一之江名主屋敷です。