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小名木川(新江戸百景めぐり③)

小名木川(新江戸百景めぐり③)

 中川船番所は、前回紹介したように、小名木川と中川(現在は旧中川と呼ばれています)の合流地点にありました。 

 現在の小名木川は、全長約5キロメートル、東端は旧中川、西端は隅田川と合流し両河川を結ぶ人口の河川です。

その小名木川も、新江戸百景巡りの一つに選ばれています。そこで、今日は、小名木川について書いていきます。

『新江戸百景めぐり』ではP55の第13景として取りあげられています。

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小名木川は、天正18年(1590)、徳川家康が江戸に入府した際に、行徳の塩を江戸に運ぶために開削された川でした。徳川家康が入府早々に手掛けた土木工事の一つとされています。

上写真は、小名木川と旧中川の合流地点です。現在は、小名木川と旧中川がTの字型に交わっています。写真左手の岸に、中川船番所がありました。

 しかし、江戸時代には、小名木川の先に、ほぼ直線に川が流れていて、行徳に向かっていました。その様子は、歌川広重の名所江戸百景「中川口」(下写真)を見るとよくわかります。手前が小名木川、横にながれるのが中川、そして画面奥が行徳方向でそちら向けて流れているのが船堀川(現在は新川と呼ばれています)です。右下に柵が描かれていますが、それが中川船番所です。

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小名木川は、開削されたというので、一旦埋め立てた陸地を掘削して河川にしたのかと思っていましたが、中川船番所資料館の説明では、深川地域を埋め立てる際に、浅瀬にある水路を埋めずに水路としたと書いてあり、なるほどと理解しました。

なお、小名木川の名称は開削に携わった「小名木四郎兵衛」に由来しています。

小名木川五本松跡 

 江戸時代、小名木川で有名なものの一つに小名木川五本松がありました。

 小名木川の北岸の九鬼家の屋敷に、枝を張った形の良い老松がありました。

 明治時代に、この松は枯死してしまい、昭和63年に五本の松が植えられています。(下写真)

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 江戸名所図会では、芭蕉がこの場所に船を止め、「川上とこの川しもや 月の友」の句を詠んだ場面が描かれています。(下写真)

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この芭蕉の詠んだ俳句の句碑が、芭蕉記念館の庭園に設置されています。(下写真)小さな句碑ですので、見つけにくいと思いますが、芭蕉記念館に行ったら探してみてください。

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 また、この松は浮世絵にも描かれました。歌川広重が描いた名所江戸百景の「小奈木川五本松」が大変有名です。(下写真)

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広重の絵では、小名木川が曲がっているように描かれていますが、実際の小名木川は直線となっています。下写真が、五本松跡の下流からとった小名木川ですが、直線であることがわかると思います。写真中段の橋(小名木橋です)の右手の緑が五本松です。

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猿江船改番所跡

小名木川が大横川と合流する地点の少し東にある新扇橋の北西たもとに「猿江船改番所跡」と書かれた江東区教育員会が建てた説明板があります。(下写真)

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猿江船改番所は、小名木川と大横川が交差する所の猿江側に、元禄から享保期頃に設置されました。

中川船番所は小名木川を通航する船や人々を取り締まっていましたが、猿江船改番所の役割と中川船番所の役割は異なっていました。

当時、幕府や諸藩の荷物を運搬し、江戸へ出入りする船には幕府の勘定奉行に属する川船改役によって極印が打たれ、年貢・役銀が課せられていました。そのため新たに船を造ったり、売買によって持ち主が替わった場合などは届け出が義務づけられていました。

猿江船改番所の仕事は、こうした年貢・役銀を徴収したり、川船年貢手形や極印の検査を行っていました。

中川番が若年寄に直属しているのに対して、改番所を所管していたのは、勘定奉行に属した川船改役でした。

万年橋

小名木川が隅田川と合流する地点近く架かっている橋が万年橋です。下写真は、隅田川テラス側から撮った万年橋です。

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前回書いたように万年橋の北側には昔、船番所があったので、元番所橋とも呼ばれました。

万年橋が架橋された年代は明らかではありませんが、延宝8年(1689)の江戸図には「元番所のはし」として記されているそうです。江東区内の橋のなかでも古く架けられた橋のひとつです。

小名木川に架けられた橋は、船の通航を妨げないように高く架けられていましたが、江戸時代の万年橋も虹型をした橋でした。

葛飾北斎が描いた「富嶽三十六景・深川万年橋下」には、美しい曲線を描く万年橋が描かれ、橋の下から富士山を望む構図となっています。

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また、安藤広重は「名所江戸百景」のなかで「深川万年橋」としてとりあげています。
 画面上段に大きく描かれた亀は、「鶴は千年、亀は万年」と言われたことから万年橋にかけてシャレて描いているだけでなく、捕らわれた生き物を放すことで功徳を積むという放生会(ほうじょうえ)のための亀と考えられます。深川といえば富岡八幡宮の放生会が大変有名でしたので、この亀は富岡八幡宮の放生会のために売られているものでしょう。そうすると、この絵が描いているのは8月15日ということになります。

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なお、亀が橋の欄干に縛り付けられているようなコメントがあったりしますが、亀が縛り付けられたいるのは黄色の部分です。そお黄色の部分は亀が入れられている桶を描いていると思われます。したがって、亀は橋の欄干に縛られているのでは、桶に縛られていると考えたほうがよいと思います。


赤印が小名木川五本松です。
 青印が「猿江船改番所跡」説明板の設置地点です。 

ともに都営地下鉄新宿線の「住吉駅」が最寄駅です。


 ピンク印が、万年橋です。 最寄駅は「清澄白河」駅です。











by wheatbaku | 2019-06-23 22:19 | 新江戸百景めぐり

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
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