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名主の滝公園(新江戸百景めぐり⑩)

名主の滝公園(新江戸百景めぐり⑩)

 王子稲荷神社のすぐ近くに名主の滝公園があります。

 そこで今日は名主の滝公園についてご案内します。

 『新江戸百景めぐり』(小学館刊)では第85景としてP148で紹介されています。下写真は公園入口です。

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 名主の滝は、もとは、江戸時代の安政年間に王子村の名主畑野孫八が自分の屋敷に開いたのが始まりとされています。

名主の屋敷にある滝ということで「名主の滝」という名前がつけられました。

庭園として整備されたのは、明治の中頃で、垣内徳三郎という人の所有になってからだそうです。昭和13年には、株式会社精養軒が買収し、食堂やプールなどが作られ公開され続けてきましたが、昭和20年4月に空襲により焼失してしまいました。

昭和35年に「都立名主の滝公園」として再び公開されるようになりました。

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王子近辺には滝が多く、「王子七滝」と呼ばれる7つの滝がありました。

しかし、そのほとんどが姿を消して、現在は「名主の滝」だけが唯一残されています。

 「名主の滝公園」には、男滝(おだき)、女滝(めだき)・独鈷の滝(どっこのたき)・湧玉の滝(ゆうぎょくのたき)の4つの滝があります。

 この中で、水が落下しているのは、男滝だけです。それも午前10時から午後4時まで間だけ滝の水が流れています。

こうなっているのは、ポンプでくみ上げた水を落下させる仕組みとなっていて、自然の水が流れおちているわけではないからです。とはいいものの、男滝は、落差4メートルもありそうですので、見ごたえがある滝です。(下写真)

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しかも、水が流れ落ちている滝壺近くにいくと水しぶきが飛んで、気温の高い時は、非常に爽快です。

男滝以外の3つの滝は、水が流れていませんので、枯滝の状態となっています。

名主の滝公園には、ケヤキやシイなどの外、ヤマモミジが植えられていて、昼間でもうっそうとした雰囲気がする公園です。また、モミジが黄葉する時期は、大変見事だそうです。

訪ねた時には、男滝から流れ出している小さな流れに鴨のつがいが楽しんでいました。とても23区内とは思えない風情です。(下写真)

 

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王子近辺に、「王子七滝」と呼ばれほど滝が多かったのは、王子が武蔵野台地の突端の崖線にあるためです。

「王子七滝」と呼ばれた滝は、名主の滝、権現滝、不動の滝、弁天の滝、稲荷の滝、大工の滝、見晴らしの滝の7つの滝です。

現在、ほぼ元の姿をとどめているのは「名主の滝」です。

しかし、それ以外の滝も、かすかに、その名残りが残されています。次にそれを順にご紹介します。

権現の滝

権現の滝は、王子神社の東側周辺にあった滝だと思われます。

権現というのは、江戸時代には、王子神社が王子権現と呼ばれていたため、王子権現にある滝という意味だと考えられます。

現在、王子稲荷の東側の石神井川の旧流路に「音無親水公園」が整備されています。

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石神井川は、昭和30年代から始まった改修工事によって、飛鳥山公園の下に2本のトンネルが掘られ、飛鳥山の下を直線的に流れています。この工事により、残された旧流路は、石神井川の水は一切流れなくなりましたが、音無親水公園が整備され、昔の渓流が復活しています。

その音無親水公園の一画に権現の滝を模した滝が整備されています。(下写真)

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訪ねた時には、水が流れていませんでしたので、北区役所に電話したところ、夏場の暑い時期だけ水を流しているということでした。

不動の滝

不動の滝は、正受院本堂裏の石神井川の岸にありました。
 正受院の参道に、次のように書いた北区教育委員会が設置した説明板があります。(下写真)

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 室町時代、大和国に学仙坊という不動尊の祈祷を修行する僧侶がいた。ある時、霊夢を見て東国の滝野川の地を訪れ、庵をむすんで正受院を草創した。この年の秋、石神井川が増水したが、水の引いた川から不動の霊像をすくいあげた。学仙坊は、これを不動尊修法の感得した証と喜び、滝の傍に安置したと伝えられます。不動の滝は、滝の傍に不動尊が祀られていたことから付けられた名称です。

現在も、正受院に不動堂(下写真)がありますが、石神井川が改修され、岸辺がすっかりコンクリートで補強されているため、不動の滝の面影はありません。

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江戸時代の不動の滝をイメージするには、歌川広重の名所江戸百景の「王子不動之滝」が一番だと思います。

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広重が描いた不動の滝はすごい勢いで水が落ちています。

「この滝は不動明王が持っている剣をイメージして描いたのだろう」という説があるそうですが、その説の通りだと思います。

弁天の滝

正受院から石神井川に沿って西に向かうと間もなく、金剛寺が見えてきます。その金剛寺の先が、音無もみじ緑地となっています。もともとこの辺りは、石神井川が蛇行して流れていた場所ですが、石神井川の改修工事の際に緑地公園にしたもののようです。(下写真)

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北区の説明板によると、「現在都営住宅が建っている付近の崖に滝があり、弁天の滝と呼ばれていました。」と書いてあります。

下写真が音無もみじ緑地を上流側から撮った写真ですが、写真の右手都営住宅がありますので、写真の右手の現在はコンクリート壁となっている辺りもしくは音無もみじ緑地の土手付近に、弁天の滝があったものと思います。

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弁天の滝は、歌川広重が描いた名所江戸百景「王子滝の川」にも描かれています。(下写真)

 絵の右手手前の滝が弁天の滝です。赤い鳥居が岩屋弁天(松橋弁天ともいう)です。
名主の滝公園(新江戸百景めぐり⑩)_c0187004_21521924.jpg

現在、岩屋弁天は、金剛寺の境内の弁天堂に鎮座しています。(下写真が弁天堂) 

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赤印が名主の滝公園です。 
青が音無親水公園です。 
緑印が正受院です。 
ピンクが金剛寺です。 
オレンジが音無もみじ緑地です。





by wheatbaku | 2019-07-11 21:42 | 新江戸百景めぐり

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