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「解体新書」も1級頻出問題(江戸検お得情報3)

「解体新書」も1級頻出問題(江戸検お得情報3

 今日も、「江戸検お得情報」について書いていきます。

 1級問題の過去問を丁寧に解いていく、繰り返し出題されている問題があることに気がつきます。今日も、そうした問題について書いてみます。

 第14回の1級問題に次のような問題が出題されました。

79】《誠に艫舵(ろかじ)なき船の大海に乗り出せしが如く、茫洋(ぼうよう)として寄るべきかたなく、ただあきれにあきれて居たるまでなり》

この文章は、ある事業に取り組んだ当事者たちが、前途の多難さに困惑した様子を回想したものです。完成までに4年を要した、その事業とはどれでしよう?

)『解体新書』の翻訳出版  ろ)『大日本史』の編纂

)玉川上水の開削      に)麻酔薬「通仙散」の開発

 この問題の正解は、い)『解体新書』の翻訳出版 です。

解体新書は、ドイツ人クルムスの「解剖図譜」をオランダ語訳した「ターヘル‐アナトミア」を前野良沢や杉田玄白たちが翻訳したものです。

その翻訳作業の中心人物の一人杉田玄白は、『蘭学事始』を書いて、「解体新書」を翻訳し出版した苦心談を中心に蘭学草創期の状況を回想しています。

上記の問題の冒頭の文章はこの『蘭学事始』の中の文章です。

1級の過去問を解いていくと、次のように「解体新書」や杉田玄白に関する出題問題が多いことに気がつきます。

3回では、杉田玄白が墓碑銘を書いた人物の名前が出題されています。

6回では、杉田玄白の弟子の名前が出題されています。

10回では、杉田玄白の弟子の大槻玄沢が中心となって翻訳した書物名、そして杉田玄白がその著書『形影夜話(けいえいやわ)』の中で解説した病気の名前が出題されています。

そして、第13回は、「解体新書」がうまれるきっかけとなった腑分けが行われて場所が出題されています。

それぞれの問題の詳細は下段に書いておきましたので確認してください。

こうしてみてみると「解体新書」と杉田玄白は要注意ということになります。

今年是非とも1級に合格したいと思っている人は、「解体新書」と杉田玄白も勉強しておいたほうがよいように思います。

お近くの図書館で「杉田玄白」で検索すると多くの関係書物がヒットすると思いますので、ご自分の好きな本を読んでみてください。

私が読んだのは講談社学術文庫の「蘭学事始」(全訳注片桐一男)です。まず現代語訳が書いてあり、ついで原文が記載されていて原文も読むことができます。第14回の問題の冒頭の文章は109ページに載っています。さらに詳細な解説も書いてあります。片桐一男先生は青山学院大学名誉教授で杉田玄白関係の著書を数多く手がけている日蘭関係史の第一人者です。

「解体新書」も1級頻出問題(江戸検お得情報3)_c0187004_11422882.jpg

また、時代小説が好きな人には、新潮文庫「冬の鷹」(吉村昭著)がお勧めです。

この小説の主人公は杉田玄白ではなく翻訳作業の中心人物として苦労した前野良沢です。

杉田玄白が「解体新書」翻訳成功で脚光をあびる一方、地道に翻訳の道を突き進む孤高の人物前野良沢の苦心や晩年の生活が描かれていますが、その中で、「解体新書」翻訳作業の苦心がよく描かれています。

「解体新書」も1級頻出問題(江戸検お得情報3)_c0187004_11422828.jpg

「解体新書」出版までの概略を手軽に理解するには「風雲児たち~蘭学革命篇~」が良いと思います。コミックですので手軽に読めます。2018年元旦にNHKで放映された正月時代劇の原作本です。

「解体新書」も1級頻出問題(江戸検お得情報3)_c0187004_11422805.jpg
 

以上、いくつか「解体新書」や杉田玄白に関する本を紹介しましたが、ご自分でよいと思う本を探して読んでみてください。うまくすれば、これで1点得するかもしれませんので・・・



最後に、「解体新書」と杉田玄白に関係する1級問題を書いておきます。超難問でありませんので正解はご自分で見つけてください。

3回【100】「ああ、非常の人、非常のことを好み、行いはこれ非常、何ぞ非常に死するや」これは、杉田玄白が書いたある人物の墓碑銘の文章です。では、玄白の友人の本草学者で、火浣布やタルモメイトルを制作し、浄瑠璃作家としては福内鬼外(ふくちきがい)などのペンネームでも知られるこの人物は誰でしよう?名前を漢字4文字で書いてください。

6回【80】私は、杉田玄白の弟子です。江戸に私塾の芝蘭堂を開き、『蘭学階梯』「環海異聞(かんかいいぶん)』などの著作を残しました。さて、私は誰でしよう?

)稲村三伯  ろ)宇田川玄随 
 は)大槻玄沢  に)前野良沢

10回【84杉田玄白の弟子のなかでも、大槻玄沢はオランダ語を得意とし、もっとも翻訳事業を発展させました。では、玄沢が中心となり日本で初めてオランダ語から翻訳した百科事典は、次のうちどれでしよう?

)「厚生新編』   )『ハルマ和解』

)『蘭学階梯』  )『暦象新書』

10回【37】初代将軍家康の次男・結城秀康(ゆうきひでやす)は、感染性の病気で命を落としたとされます。江戸時代に大流行したその病気について、杉田玄白は著書『形影夜話(けいえいやわ)』のなかで「毎年1000人あまり治療するが、そのうち700800人はこの患者である」と述べています。その病気はどれでしよう?

)脚気     )梅毒   )麻疹    )労咳

13回【27】明和8( 1771 )、前野良沢は、杉田玄白・中川淳庵らと死刑囚の腑分け(解剖)に立ち会い、オランダ語の解剖書『ターヘル・アナトミア』の正確な人体図に感嘆し、翻訳を決意しました。『解体新書」が生まれるきっかけとなったこの腑分けは、どこで行なわれたでしよう?
 い)神田佐久間町医学館   ろ)小伝馬町牢屋敷

)品川鈴ヶ森刑場     に)千住小塚原刑場





by wheatbaku | 2020-03-23 11:38 | 江戸検お得情報

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