刀剣①―刀剣に由来する言葉(江戸検お得情報11)
江戸検1級問題には、刀剣に関する問題も出題されています。
第9回27問には、「切羽詰まるの切羽とはどの部分か」という問題、第11回32問には「妖刀村正」、第14回26問には「天下五剣」が出題されています。(問題の詳細は後記します。)
つまり、1級に合格するには刀剣に関する情報や知識もあったほうが良いということになります。
そこで、今日から数回にわたって刀剣について書いていきます。
第9回に出題された問題は次のような問題です。
【27】「太刀打ちできない」「鍔迫り合い」など、刀にちなむ表現は現在でもよく使われています。窮地に陥るという意味で用いられる「切羽(せつば)詰まる」もそのひとっですが、「切羽」とは下の図の (い)から(に)のどの部分でしよう?
この問題は、刀剣に由来する「切羽つまる」という言葉が出題されています。
刀剣に由来する言葉は、意外と多くあります。
そこで、今日は、「刀剣に由来する言葉」について書いていきます。
なお、私は、刀剣についての知識はほとんどありませんので、『日本名刀物語』(佐藤寒山著 河出書房新社)と『武将・剣豪と日本刀』(笠倉出版社)(下写真)を参考にして書いていきます。
刀剣に由来する言葉を次に五十音順に書いていきます。
①の部分は、『三省堂国語辞典』に記載されている語句の意味です。②はもともとの意味などについて説明しています。
【相槌を打つ】
①相手の話の途中で短い言葉を入れたりうなずいたりすること
②もともと相槌を打つというのは刀を鍛錬する際に、師匠の打つ槌に合わせて弟子が槌を入れることをいいます。
【押取刀(おっとりがたな)】
①おおあわて
②「押取刀」とは、もともと刀に腰にささないで、手に持ったままの状態をいう言葉です。
【折紙付き】
①保証付き
②折紙は元々は文書の一形式で奉書を横長に二つ折にしたものを言いました。江戸の刀剣鑑定は本阿弥家が行ないました。この本阿弥家で出す鑑定書は折り紙形式でした。そこから折り紙が鑑定書のことを意味するようになりました。
【快刀乱麻(かいとうらんま)を断つ】
①むずかしい事件(問題)をあざやかに解決する。
②もとの意味は「よく切れる刀でもつれた麻を断ち切るということ」です。
【極め付き】
①保証付き
②「折紙付き」と同じで、折紙と同じく鑑定書を極書(きわめがき)と呼んだことに由来します。
【鐺(こじり)が詰まる】
①借金の返済ができなくなり動きがとれなくなること
②鞘の先端部分を鐺(こじり)といいます。鐺が詰まると刀の抜き差しができなくなってしまいます。そこから転じて上記の意味に使われるようになりました。
【切り結ぶ】
①刀を打ち合わせて激しく切りあう。はげしく争う
【鞘当(さやあて)】
①行き違った武士が、おたがいに刀の鐺(こじり)の打ち当ったのをとがめること。ふたりの男性がひとりの女性のことで争うこと
②他人の刀の鞘に自分の刀の鞘を当てることは非常に無礼なことで、「イヤ失礼」「イヤどうも」ということではおさまらず、血を見る以外には方法がなかったようです。もちろん、現在ではそんなことはなく、悪感情を持つとか喧嘩をするという意味で使用されています。
【鎬(しのぎ)を削る】
①激しく争う
②鎬(しのぎ)とは刀の両面の刃と峯の間の中央の少し高くなった部分を指し、刀身に沿ってきれいな曲線を描いています。戦闘が激しくなると鎬の部分が互いに交差して鎬を削るような形で戦うことを「鎬を削る」といいました。
【切羽(せっぱ)詰る】
①どうにもしかたがなくなる。さしせまる。
②切羽とは鐔を挟み込む金具で、刀身が動かないようにするものです。そのため、刀の切羽が詰めて刀身が動かないようにする必要があります。ですから、実用面からは「切羽詰まる」必要があるのですが、なぜか言葉としてはネガティブな意味に使用されています。
【反りが合わない】
①(性格や考え方が違って)しっくりいかない
②刀の緩やかに湾曲している部分を「反り」といいます。その「反り」の曲がり具合が鞘と合っていないとうまく収まりません。それが「反り」が合わないということです。
【太刀打ち】
①太刀で戦うこと。競争。
【単刀直入】
①前置きをしないで、いきなり本題に入ること。
②もとは一人で敵陣に斬り込むということを意味しました。
【付け焼き刃(つけやきば)】
①一時しのぎ。まにあわせに仕入れた知識・動作など
②付け焼き刃とは、切れ味の良くない刀に鋼(はがね)の焼き刃を付け足したものをいいました。切れ味が良く長持ちする刀は何度も地金を打って作られます鋼を足しただけの付け焼刃は、すぐに斬れなくなり使い物にならなくなってしまいました。
【鐔迫り合い(つばぜりあい)】
①刀をつばのところで打ちあわせて、おたがいにおしあうこと。おたがいにはげしく競争すること
②もともとは、剣術の試合でお互いに鍔で受け止め押し合う状態をいう言葉です。
【伝家の宝刀】
①その家に伝わる大切な刀。どうしても必要な場合以外はむやみに使わない手段。
【抜打(ぬきうち)】
①刀を抜くと同時に切りつけること。前もって知らせないで突然行うこと。
②刀は刃を上向きにして腰に差します。通常は刀を抜く動作と人を切る動作の二段階になりますが、刀を抜く動作と切る動作が一つの動作になったのが「抜き打ち」です。
【抜き差しならない】
①(さびついた刀の状態から)どうしようもない
②まったく身動きの取れない状態。刀身がさび付くと鞘の中で押しても引いても動かなくなることから。
【火花を散らす】
①激しく争うこと。
②もともとは刀を打ち合わせて戦うことを指して言葉です。
【懐刀(ふところがたな)】
①懐に入れて持ち歩くまもり刀。秘密の相談などにあずかる腹心の部下。
【目貫通り(めぬきどおり】
①一番目立つにぎやかな通り。
②目貫は刀剣の柄(握る部分)につける装飾金具で刀装具の中でも良く目だつ金具です。そこから目貫通りという言葉がうまれました。なお目貫は目抜とも書きます。
【元の鞘に収まる】
①けんかや夫婦別れしたものが仲直りして元通りになる。
②刀は他の鞘にはうまく入らないが元の鞘にはすんなりと入ることから生まれた言葉です。
【焼きが回る】
①焼き入れをしすぎて刀がなまくらになる。年をとって鈍り、役に立たなくなる。
最後に、第10回と第14回の問題を書いておきます。
第10回【32】徳川家康の祖父清康・父広忠・長男信康は、同じ銘をもつ刀で命を落としたとされます。そのため、 この銘をもつ刀は徳川家に祟る妖刀とされ、家康も「みな取り捨てよ」と命じています。幕末には倒幕派の志士が好んで差したという、この刀の銘は何でしよう?
い)虎徹(こてつ) ろ)備前長船(びぜんおさふね)
は)正宗(まさむね) に)村正(むらまさ)
第14回【26】豊臣秀吉の正室・高台院(こうだいいん)の遺品として、2代将軍秀忠に贈られた太刀はどれでしよう?現在東京国立博物館が所蔵しているこの刀は、「天下五剣」のひとつに数えられています。
い)鬼丸国綱(おにまるくにつな)
ろ)大般若長光(だいはんにゃながみつ)
は)鶴丸国永(つるまるくになが)
に)三日月宗近(みかづきむねちか)