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日坂・掛川(広重『東海道五十三次』12)

日坂・掛川(広重『東海道五十三次』12


 
広重『東海道五十三次』、今日は、日坂(にっさか)宿と掛川宿について書いていきます。両宿場とも、現在は掛川市にあります。

26、日坂(佐夜ノ中山)

 日坂(にっさか)は、静岡県に住んでいない私にとっては馴染みのない宿場名で、どこにあるのかすぐにはわかりませんでした。以前は日坂村でしたが、昭和30年に掛川市と合併し現在は掛川市日坂となっています。

 日坂は、この絵の副題となっている「佐夜ノ中山」の西側にあります。そのため西坂と呼ばれていたのが、日坂に転訛したと言われています。

 佐夜ノ中山(現在は、小夜の中山と表記されていますので、これ以降は小夜の中山と表記します)は、金谷宿と日坂宿の間にあり、東海道の難所の一つに数えられました。 

そのため、保永堂版ではまるで転げ落ちそうなほど急な坂として描かれています。私はここを訪ねたことがないので詳しくはわかりませんが、Google マップのストリートビューで見てみると、確かに旧東海道らしく道が狭く坂道となっていますが、絵ほどの急坂ではないように思われます。広重が誇張して描いたものと思われます。

絵の中では、坂の途中で金谷宿に戻ると思われる戻り駕籠の駕籠かき人足が駕籠を担いで坂を登っています。

遠景に青く描かれた山は、小夜の中山の北にある粟ヶ岳(標高532)だそうです。つまり、この絵は、やや南西の視点で東から北をみて描かれた絵です。

日坂・掛川(広重『東海道五十三次』12)_c0187004_16284915.jpg

「国立国会図書館ウエッブサイトから転載」


 小夜の中山では、西行が詠んだ和歌「年たけて また越ゆべしと 思ひきやいのちなりけり さ夜の中山」がよく知られています。

また、小夜の中山には「夜啼(よなき)石の伝説」と言われる伝説があります。

 昔、東海道脇にある久延寺(きゅうえんじ)に安産祈願にきた妊婦が小夜の中山を越える途中、山賊に襲われて殺されてしまいました。 その時、斬られた母親のお腹から運よく赤ん坊が生まれした。この赤ん坊を助けるため、母親の魂はかたわらの石にのりうつり泣き声をあげました。この泣き声に気づいた久延寺のお坊さんに赤ん坊が拾われました。赤ん坊は、母乳の代わりに水飴を与えられ、大事に育てられました。その子供は立派に成長し、のちに母の仇を討ったと云われています。

この伝説は、当時多くの人に知られていたのでしょう。広重も、この絵に、夜泣き石を描いています。下の拡大画像で坂の下で旅人たちが取り囲んでながめているのが夜泣き石です。石には「南無阿弥陀仏」と刻まれているそうですが、それらしき文字も描かれています。

 現在、夜泣き石は東海道からは少し離れた国道一号線の小夜の中山トンネル脇に据えられています。伝説に登場する久延寺にも夜泣き石も似た形の石が安置されていて、久延寺近くの扇屋では、子育て飴を今も販売されています。

日坂・掛川(広重『東海道五十三次』12)_c0187004_16284993.jpg

「国立国会図書館ウエッブサイトから転載」

27、掛川(秋葉山遠望)

掛川は、掛川城の城下町です。掛川は、豊臣秀吉の小田原征伐後、秀吉の家臣山内一豊が入りました。山内一豊は関ヶ原の戦いで家康に与した功績で土佐国に移封されました。それ以降は、掛川藩には譜代大名が入れ替わりに入封されましたが、延享3年(1746)からは太田道灌の子孫の太田家が5万石で入封し、以後明治維新まで太田家が続きました。

広重が描いたころは掛川宿は城下町でしたが、この絵にはお城の姿がまったくありません。

広重は、城下町ではなく宿場の西を流れる倉真川に架かる大池橋のたもとからほぼ真北の方角にある秋葉山を描いています。
 そこで副題が「秋葉山遠望」となっています。

大池橋のたもとからは、秋葉山の山頂近くにある秋葉大権現(現・秋葉山本宮秋葉神社)へ続く秋葉道の分かれ道が延びていました。
 秋葉大権現は火防の神様として広く信仰されていて、多くの参詣者が秋葉山へ向かいました。
 分かれ道には、秋葉大権現の鳥居があり、広重が描くほかの東海道シリーズ(「狂歌入東海道」など)の掛川には、その鳥居が描かれていますが、保永堂版では、遠景に秋葉山を描いています。

広重の絵では、秋葉山は険しい岩山として描かれていますが、実際の秋葉山はここから9里半も北にあったので、 絵のように大きくは見えませんし、稜線ももっとゆるやかだそうです。

中央に描かれた橋が大池橋ですが、この橋を渡りきったすぐのところから秋葉山への道が延びていましたので、画面手前に描かれた2基の常夜灯は秋葉山の常夜灯と思われます。

橋の上では旅の僧と行き合った老夫婦が、深々と腰を折ってお辞儀をしていますが、信心深そうなこの二人も秋葉山へ詣でるところなのかもしれません。

橋の奥の中景には青々とした水田で農夫たちが田植えをしています。

そして、遠景を見ると画面の枠をはみ出すほど空に高く舞い上がった遠州凧が描かれています。そして、さらに良くみると秋葉山近くの空に、糸のきれた凧が飛んでいっているのもわかります。橋の上の子供が飛んでいった凧の方向をみていますので、この子が揚げていた凧の糸がきれたのかもしれません。

田植えと凧揚げとは季節が合わないなぁとふと疑問に思いますが、遠州では凧揚げが、端午の節句のころにおこなわれたようです。

現在でも、浜松市で行われている「浜松まつり」は「凧揚げ合戦」で有名ですが、毎年53日~5日に開催されています。この凧揚げは、戦国時代の末期の永禄年間(1558156)に、当時の引間城主の長男誕生を祝って城中高く凧を揚げたことがはじまりだそうです。

日坂・掛川(広重『東海道五十三次』12)_c0187004_16284925.jpg

「国立国会図書館ウエッブサイトから転載」






by wheatbaku | 2020-06-11 16:22 | 広重『東海道五十三次』

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