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栄一少年の読み書き(「青天を衝け」9)

栄一少年の読み書き(「青天を衝け」9

「青天を衝け」の第2回では、栄一の少年時代の学問や武道の話もでていました。渋沢栄一は、自叙伝「雨夜譚(かたり)」で「14.5の歳までは読書撃剣習字等の稽古で日を送りました。」と語っています。そこで、今日は、栄一の少年時代の学問(読み書き)について書いていきます。


栄一の読みの練習 

 栄一が、本を読み始めたのは6歳の頃で、先生は父親の市郎右衛門でした。

 市郎右衛門から、「大学」「中庸」を読み、「論語」も読み始めた7.8歳の頃に、従兄の尾高惇忠に習うことになりました。

 尾高惇忠は、10歳年上ですので、まだ17.8歳でしたが、若いうちから本をよく読んで記憶力もよく、若いけれども立派な先生でした。尾高惇忠は、武蔵国菖蒲村(現在、埼玉県久喜市)の菊地菊城(きくちきくじょう)について学びました。菊池菊城から栄一も直接学んだこともあったようです。

 ※「幕末維新埼玉人物列伝」(小高旭之著 さきたま出版会発行)によれば、菊池菊城は、弘化2年頃から嘉永4年まで渋沢宗助家で「本材精舎」という塾を開いていて、その塾を閉めた後も再訪して講義をしたといいます。

 中の家(なかんち)は血洗島村で、尾高家は隣村の下手計村にありましたので、7.8町(と栄一は書いていますが、現在の距離は1.6キロほど)の距離を歩いて尾高家まで行き、1時半から2時(現在の時間では3時間から4時間)ほど勉強しました。下写真が尾高惇忠生家です。この建物は江戸時代後期に建てられたと伝わっていますので、尾高惇忠や栄一もこの家で勉強をしていました。

栄一少年の読み書き(「青天を衝け」9)_c0187004_20330297.jpg

 尾高惇忠の教え方は、論語などを一字一句教えて暗誦のできるようにするという方法ではなく、多くの本を読んで自身で考えるに任せるといふ教育方法だったようです。

 そのため、栄一は「三国志」とか、「里見八犬伝」といった読みやすい本を読んでいました。それについて尾高惇忠は「読み易いものから入るが一番よい。(中略)今の処では、かえって三国志でも八犬伝でも、何んでも、面白いと思ったものを、心をとめて読みさえすれば、いつか読み方がわかり、難しい本も読めるようになり、十八史略も史記も漢書もだんだん面白くなるから、せいぜい多くの本を読むのがよい」といったそうです。

 そこで、軍書・小説の類を読みましたが、その熱中ぶりは、「12歳の正月の年始の廻礼に、本を読みながら歩いていて、溝の中へ落ちて、晴れ着の衣裳を大層汚して大きに母親に叱られたことを覚えて居ます。」(「雨夜譚(かたり)」より))というほどだったようです。

 「青天を衝け」で、栄一が山田長政の小説に夢中になっていて溝におちてします場面が描かれていましたが、この場面は、「雨夜譚(かたり)」のこの部分を再現したものでしょう。

 なお、栄一が好きであったのは「三国志」や「馬琴」の小説だったそうですが、「渋沢栄一伝記資料」に収録されている「藍香翁」(塚原蓼洲著)によると尾高惇忠のススメで山田長政の本も読んでいたそうです。

 脚本の大森美香さんは、これらを総合して「青天を衝け」の栄一が溝に落ちる場面を書いているのだと思います。

栄一の書き(習字)

 栄一は、少年のころ、前述の通り習字の練習もしていました。

 栄一が揮毫したものについて、昨日、諏訪神社の額を紹介しましたが、すごく素晴らしい字です。

 栄一の揮毫したものは現在も数多くのものが残されていますが、最も有名なものは、日光東照宮の社号標です。(下写真)

栄一少年の読み書き(「青天を衝け」9)_c0187004_16022731.jpg

 これだけ素晴らしい字を書くのですから、若いころから有名な書家について習字を学んでいたんだろうと思いましたが、習字について、「雨夜譚会談話筆記」で、栄一は、「そんな深い研究をやったのではない。」と語っています。

 栄一によれば、12.3才の頃から父親に教えてもらい、それから伯父の3代目宗助(誠室)について18才頃まで稽古をしました。それだけだったようです。

「雨夜譚会談話筆記」には次のように書かれています。

最初に書を教えてもらったのは、やはり父親の市郎右衛門からだったそうです。その中には、「商売往来」などがあったようです。手習を始めて見ると、市郎右衛門は「この子は手筋がいい、少し手習をしたらよかろう』といったので、それからさらに、東の家(ひがしんち)の宗助(※宗助は父の兄ですので、栄一からみると伯父)に手習いしました。宗助は、誠室と号して中村仏庵という江戸の書家の門人でした。

宗助の家に月に2度位自分の書いたものを持って行って直してもらいました。それから帰って再び丁寧に書きかえて持って行き、6.7年間は手習をしました。

そして、正月には必ず書き初めをしました。宗助は、「栄一はなかなかうまい。おれの後が継げるよ」と言ってほめてくれたといいます。しかし、栄一19歳の頃になると、栄一が国事に熱心になってきて、手習の方はすっかりやめてしまったそうです。
 これらの栄一の思い出話をまとめたものを読んでみると、栄一の書の才能は天賦のものがあったようです。






by wheatbaku | 2021-02-22 15:59 | 大河ドラマ「青天を衝け」

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