人気ブログランキング | 話題のタグを見る
前島密、箱館の諸術調所で学ぶ(前島密③)
前島密、箱館の諸術調所で学ぶ(前島密③)

安政5年1858)、前島密は、函館の諸術調所で武田斐三郎(たけだあやさぶろう)が商船業務を教授していると聞き、これこそ積年の願いと思い箱館に向かうことにしました。

前島密、箱館の諸術調所で学ぶ(前島密③)_c0187004_18280337.jpg

この時、巻退蔵(まきたいぞう)と改名しました。人物叢書「前島密」(山口修著)では、この改名は、旅をするにあたって、武士の身分である方が有利であるからだとしています。また巻退蔵という名前は「中庸章句」の中から採ったものだそうです。

箱館までの旅では、途中で財布と紹介状を紛失してしまったり、津軽藩で入国を拒否され、やむえず南部藩領大間から箱館に向かわざるをえなくなるなど苦労をして、箱館に到着しました。箱館では、紹介されていた栗本鋤雲のもとにしばらく寄宿したあと、安政6年(1859) 24歳の春に諸術調所に入塾を許されました。

諸術調所は、安政3(1856)、箱館奉行により、西洋諸学術の研究および教育普及の目的で創設されました。その教授が五稜郭を設計したことで知られている武田斐三郎でした。

武田斐三郎は、伊予大洲藩出身で、緒方洪庵や佐久間象山の門に学びました。かつてロシア船が長崎に来た際には、蘭学者箕作阮甫に従って長崎に向かいました。安政元年には、堀、村垣両名に随行して蝦夷地巡回の途中で、ペリーの箱館来航に巡り合い、ペリーの応接にあたりました。安政2年箱館詰を命じられ、竹内、堀両奉行が安政3年、諸術調所を幕府に稟議し、開設されることになりました。

諸術調所では蘭学のほか、航海・測量・砲術・築城・造船・舎密(せいみ、化学)・器械の諸学を教授し、幕吏、藩士を問わず入学を許し、身分によらず成績で順位を決めたといいます。そのため、本州各地から多くの入塾者が集りました。

有名な塾生には、前島密のほか、山尾庸三、井上勝などがいました。同志社を創設した新島襄も入塾を希望して箱館に来たものの運悪く武田斐三郎と面会できず入塾をあきらめアメリカに渡航しています。

数年前に函館に行きましたが、函館の五稜郭近くにある五稜郭タワーには、箱館の歴史がわかる展示がされていましたが、その中に「諸術調所」の説明があり、前島密が卒業したことが書かれていました。その説明には、前島密と武田斐三郎の写真が掲示されていました。それが最上段の写真です。また、五稜郭タワーの1階には、武田斐三郎の銅像が設置されていました。(下写真)

前島密、箱館の諸術調所で学ぶ(前島密③)_c0187004_18280382.jpg

安政6年、武田斐三郎は、箱館奉行から預けられた箱館丸に乗り、産物を積んで自ら指揮し、門生を率いて北海を巡航し、更に転じて南海に出て、摂津、播暦、上総、下総から陸奥を経て南部の宮古に越冬し、ここで熔鉱炉を見学、翌万延元年箱館に帰りました。

前島密も、箱館丸に乗り込み、航海測量と帆船の運転について学びましたが、自叙伝によれば、もともとこの航海は前島密の建議によるものだそうです。自叙伝に次のように書かれています。

「余はここにおいて建議して日く、蝦夷海産物の価はここに低くして大阪辺に高きを以て、これを運搬して利益を得べきなり。

今函館丸の空しく港内に碇繋するは惜まざるべからず。海産物の運搬によりて経費を償うに余りあるべし。但し官船なるを以て、商人と利を争う事は或は政府の許さざる所なるやを知るべからざるを以て、名を日本海測量に藉りて、荷足のために海産物を積むとせば、名実共に挙(あが)るを得んと」

この航海は安政67月に箱館を出発し、安政71月に箱館に戻りましたので7ヶ月にわたる航海でした。

さらに、安政7年にも、箱館丸による日本周回の航海実習が行われ、これにも前島密が測量役として乗り込んでいます。前島密は、2回目の航海はあまり乗り気ではなかったようですが、武田斐三郎の推挙があり、塾生の勧めもあり、乗船しました。

その後、廻船問屋に頼んで廻船問屋の海陸の実務を学び、さらに樺太南岸まで航行しています。

こうした箱館での生活は実り多いものでしたが、江戸の友人から、時勢多難な時、江戸に帰れとの連絡があったため、江戸に帰ることとして、箱館奉行所の支配組頭向山栄五郎に従って江戸に帰ってきました。万延元年12月のことでした。

 この時、前島密が仕えた向山栄五郎は、後に徳川慶喜の名代としてパリ万国博覧会に参加するためにパリに渡航した徳川昭武に従って渡仏しています。




by wheatbaku | 2022-03-03 17:14

江戸や江戸検定について気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 04月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
ブログジャンル
歴史
日々の出来事