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正岡子規、野球に熱中する(スペシャルドラマ「坂の上の雲」➂)

正岡子規、野球に熱中する(スペシャルドラマ「坂の上の雲」➂)

 スペシャルドラマ「坂の上の雲」第3回では、秋山真之と正岡子規が大学予備門で学びそして悩む姿や秋山吉古が陸軍大学校で学ぶ姿が描かれていました。その中で、正岡子規が野球に熱中する様子が描かれていました。そこで、今日は、正岡子規と野球について書いてみます。下写真は野球のユニフォーム姿の正岡子規ですが、後記する正岡子規記念球場脇にある句碑の説明板の写真です。

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 原作『坂の上の雲』で、司馬遼太郎は明治22年に子規が結核になったようすを描いた「ほととぎす」の章のなかで「明治20年ごろからベースボールに熱中し、仲間を組んでほうぼうで試合をしたりした。」と書いていますし、子規が結核になり療養のため松山の実家に帰った時にも、安静するようにという医者の指示にもかかわらず、野球に熱中する様子が描かれています。

 実際の子規も野球が大好きだったようで、野球に関する俳句や短歌を多数詠んでいますし、野球に関する文章も書いています。これらの作品は、岩波文庫『正岡子規ベースボール文集』にまとめられています。(下写真)

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 そこに載っている俳句の主なものをあげると次の通りです。

「春風や まりを投げたき 草の原」 

「若草や 子供集まりて 毬(まり)を打つ」

「草茂み ベースボールの 道白し」

「生垣の 外は枯野や 球(まり)遊び」

これを読むと季節を問わず、野球に関する俳句を詠んでいることがわかります。さらに、子規の詠んだ短歌をみると子規が野球が大好きなことがよくわかります。

・久方(ひさかた)のアメリカ人のはじめにしべースポールは見れど飽かぬかも

・若人のすなる遊びはさはにあれどべースポールに如(し)く者はあらじ

・九つの人九つのあらそひにべースポールの今日も暮れけり

 また、スペシャルドラマ「坂の上の雲」では。黒板に「野球」と書いて「『のぼーる』と読むんだ」と子規が説明していましたが、実際に子規は「野球」という俳号を使用して「のぼーる」と読ませたといいます。

 子規は、様々な野球用語を日本語に訳しています。

実際に子規が書いた「ベースボール」という小文の一部を後記しておきましたが、その中で、いろいろな野球用語を日本語に訳しています。そして、その小文の最後に、「ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここに掲げたる訳語はわれの創意に係る。訳語妥当ならざるは自らこれを知るといへども匆卒の際改竄するに由なし。君子幸に正を賜へ。」と書いています。

現在、利用されている野球用語の多くのものー例をあげれば「投手」「打者」「走者」ーが、子規の手により日本語に訳されたのでした。

 こうした野球に対する功績が評価され、正岡子規は、2002年に野球殿堂入りをしています。 野球殿堂博物館は、東京ドームの一画にあります。(下写真が東京ドーム、野球殿堂博物館の入口です)

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正岡子規のブロンズは、「野球殿堂」の「新世紀特別表彰コーナー」に飾られ(下写真)、次のように説明文が書かれています。

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「野球を愛した明治の俳人・歌人 明治17年、東京大学予備門時代にベースボールを知り、野球に熱中したといわれる。227月には、郷里の松山にバットとボールを持ち帰り、松山中学の生徒らにベースボールを教えた。232月、『筆まかせ』の雅号の項に「野球」が初めて見られ、幼名「升」から(のぼーる)と読ませている。29年には『日本』新聞に連載された『松蘿玉液』の中で野球のルール、用具、方法などについてくわしく解説している。野球を詠んだ短歌、俳句も数多く見られ、新聞や自分の作品の中で紹介し、野球の普及に多大な貢献をした。

久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも

今やかの三つのベースに人満ちてそヾろに胸の打ち騒ぐかな」

 余談ですが、野球殿堂博物館では、2023年のWBC が大きく取り上げられていて、優勝トロフィーはもちろん、優勝の瞬間をとらえた写真が掲示されていました(下写真)

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 ところで、ベースボールを野球と翻訳したのは正岡子規であるという説が有力でした。

 しかし、最近では、野球という訳語を最初に使用したのは中馬庚(ちゅうまかのえ)であるというのが定説になっています。

 司馬遼太郎も原作『坂の上の雲』の中で「『野球』という日本語をあたえたのはかれ(正岡子規のこと)であった。と河東碧悟桐などはのちしきりに書いているが、そうではなく子規と一高の同窓の中馬庚だったともいわれている」と書いています。

 野球殿堂博物館でも野球の訳語は中馬庚(ちゅうまかのえ)によるものだとして、野球の歴史コーナーの中に次のように書かれています。

「明治27年(1894)に一高(のちの東京大学)の中馬庚(かのえ)が『校友会雑誌号外』の例言(用語の解説)で「野球」と訳しやがてこれが一般に使われるようになった」  下写真が展示されていた『校友会雑誌号外』です。

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 スペシャルドラマ「坂の上の雲」でも、こうした最近の説にそった説明がされていました。

下写真が「野球の歴史コーナ」入口風景です。手前には天井から「春風や まりをなげたき 草の原」という子規の句が掲示されています。

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 正岡子規は晩年は現在の台東区に住んでいました。そうしたことも関係しているのだと思いますが、上野公園にある都立の野球場に「正岡子規記念球場」という愛称が付けられています。(下写真)

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 この球場のホームベースの後ろ側(球場外です)に正岡子規の句碑が建てられています。句碑には「春風や まりを投げたき 草の原」と刻まれています。(下写真)

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 そして、句碑の手前に設置されている説明板には次のように書かれています。

「正岡子規記念球場

 正岡子規(18671902)は俳人、歌人、随筆家であり、現在の愛媛県松山市に生まれた。名は常規。子規は、明治時代のはじめに日本に紹介されて間もない野球(ベースボール)を愛好し、明治19年頃から同23年頃にかけて上野公園内で野球を楽しんでいた。

 子規の随筆『筆まかせ』には、明治23321日午後に上野公園博物館横空地で試合を行ったことが記されており、子規はこのとき捕手であったことがわかる。子規の雅号のひとつに、幼名の升にちなみ「野球(の・ぼーる)」という号がある。子規は野球を俳句や短歌、また随筆、小説に描いてその普及に貢献した。ベースボールを「弄球」と訳したほか「打者」「走者」「直球」などの訳語は現在も使われている。これらの功績から平成14年に野球殿堂入りをした。

 子規が明治27年から同35年に亡くなるまで住んでいた住居は、戦後再建され「子規庵」(台東区根岸2-5-11)の名で公開されている。

 上野恩賜公園開園式典130周年を記念して、ここに子規の句碑を建立し、野球場に「正岡子規記念球場」の愛称が付いた。

 平成187月 台東区・台東区教育委員会」


◆参考 「ベースボールとは何ぞや―随筆『松蘿玉液』より」より

[○ベースボールの球 ベースボールにはただ一個の球ボールあるのみ。しかして球は常に防者の手にあり。この球こそこの遊戯の中心となる者にして球の行く処すなわち遊戯の中心なり。球は常に動く故に遊戯の中心も常に動く。されば防者九人の目は瞬時も球を離るるを許さず。打者走者も球を見ざるべからず。傍観者もまた球に注目せざればついにその要領を得ざるべし。今尋常の場合を言わば球は投者[ピッチャー]の手にありてただ本基[ホームベース]に向って投ず。本基の側には必らず打者[ストライカー]一人〈攻者の一人〉棒[バット]を持ちて立つ。投者の球正当の位置に来れりと思惟する時は〈すなわち球は本基の上を通過しかつ高さ肩かたより高からず膝より低くからざる時は)打者必ずこれを撃うたざるべからず。棒球[ボール]に触ふれて球は直角内に落ちたる時(これを正球[フェアボール]という)打者は棒を捨てて第一基に向い一直線に走る。この時打者は走者[ラナー]となる。打者が走者となれば他の打者は直ちに本基の側に立つ。しかれども打者の打撃球に触れざる時は打者は依然いぜんとして立ち、攫者[キャッチャー]は後(一)にありてその球を止めこれを投者[ピッチャー)に投げ返す。投者は幾度となく本基に向って投ずべし。かくのごとくして一人の打者は三打撃を試むべし。第三打撃の直球[ジレクトボール](投者の手を離れていまだ土に触れざる球をいう)棒[バット]と触れざる者攫者[キャッチャーよくこれを攫かくし得ば打者は除外[アウト]となるべし。攫者これを攫し能わざれば打者[ストライカー]は走者[ラナー]となるの権利あり。打者の打撃したる球[ボール]空に飛ぶ時(遠近に関せず)その球の地に触れざる前これを攫する時は(何人にても可なり)その打者は除外[アウト]となる。(未完)明治29年7月23日]


下地図の中央が「正岡子規記念球場」です。




by wheatbaku | 2024-09-24 22:00 | スペシャルドラマ「坂の上の雲」

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