2018年 01月 20日 ( 1 )
『解体新書』(『蘭学事始』)

『解体新書』(『蘭学事始』)

しばらく、『蘭学事始』のことを書いていませんでしたが、『解体新書』についてはどうしても書いておきたいので、今日は『解体新書』について書いてみます。

 『解体新書』というと最下段の表紙が大変有名です。

 しかし、その内容がどうなっているのか、今まで、私はまったく知りませんでした。

 『解体新書』は図だけをまとめた「序図」と呼ばれる巻が一つ、そして本文が四巻からなります。

下記写真は、『解体新書』の巻之一の部分です。

c0187004_03080103.jpg

見ていただいてお分かりになると思いますが、全文、漢文で書かれています。

つまり、『解体新書』は、『ターヘル・アナトミア』を翻訳して和文として出版したのではなく、さらに漢文に替えて出版したのでした。

『ターヘル・アナトミア』の翻訳の中心は前野良沢でしたが、漢文で書いたのは杉田玄白でした。

 杉田玄白は、日中の翻訳が終わったあと、自宅で漢文に書き替えて、翌日、仲間に見てもらうという作業を繰り返しました。

 なぜ、漢文で書いたのかというと、日本だけでなく、中国そして漢字文化圏でも、『解体新書』が利用されることを意識していたからだと言われています。

 その杉田玄白の意気込みは訳者名を書いた上部にある「日本」という言葉にもあらわれています。

 日本の人々が読むのであれば、若狭杉田玄白翼譯だけで済みますが、中国の人が読む場合には、若狭では認識されません。そこで「日本」という国名を付け加えたと考えられています。

 また、『解体新書』には、吉雄耕牛が書いた序文が書かれています。

序文を書いた吉雄耕牛は長崎のオランダ通詞であり、西洋の諸学(天文・地理、医学など)に通じていて、当時、日本で最もオランダ語に卓越していると評価されていた人物でした。

前野良沢が、百日間の暇をもらって長崎に行った際に、吉雄耕牛にもオランダ語を学んでいます。

言ってみれば、前野良沢の師匠ということになります。

吉雄耕牛は、長い序文で前野良沢と杉田玄白たちが、『解体新書』出版に至った経緯について書いて、翻訳の中心人物が前野良沢であったことにも触れています。

その中で、『解体新書』出版の意義について、次のように書いています。

原文は漢文ですが、講談社現代文庫『解体新書 前現代語訳』(酒井シヅ著)より引用させていただきます。

自分はこれを受けとり、読んだところ、内容が詳細で論旨がよく通り、事柄と言葉を原書と比べてみると一つも間違いがなかった。そこで学問に忠実であるとはこういうことかと感心し、思わず涙がはらはらとこぼれた。そしてはたと書物を閉じて、ため息をつき、ああついにこの快挙がなされたと感嘆したのであった。

赤字部分を読むと、いかに吉雄耕牛が蘭書を翻訳して『解体新書』が出版されることに感激しているかがよくわかる序文だと思います。

ただし、多くの学者が、「事柄と言葉を原書と比べてみると一つも間違いがなかった。」と書いてあるのは、書きすぎであると指摘しています。

吉雄耕牛には、逐一、原書と『解体新書』の訳文をチェックする時間も能力もなかったと考えられているからです。

さらに、下記の『解体新書』の扉絵は大変有名なものですが、この扉絵は「『ターヘル・アナトミア』の扉絵とはまったく異なったもので、スペインの解剖学者ワルエルダという人が書いた著書の扉絵と似ていると講談社現代文庫『解体新書 前現代語訳』(酒井シヅ著)の解説の中で小川鼎三先生が書いています。これも意外な発見でした。

c0187004_03075503.jpg




[PR]
by wheatbaku | 2018-01-20 03:05 | Trackback
  

江戸や江戸検定についてに気ままに綴るブログ    (絵は広重の「隅田川水神の森真崎」)
by 夢見る獏(バク)
プロフィールを見る
画像一覧
以前の記事
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
ブログパーツ
最新のコメント
ツユクサさん 江戸城散..
by wheatbaku at 12:53
獏様 江戸城散策、お疲..
by ツユクサ at 08:26
宮越さん コメントあり..
by wheatbaku at 11:42
今回のブログで、霊厳寺が..
by 宮越重遠 at 10:51
やぶひびさん 本妙寺は..
by wheatbaku at 13:05
「江戸から東京へ1」を図..
by やぶひび at 09:30
ツユクサさん 土曜日は..
by wheatbaku at 21:00
獏さん 案内お疲れ様で..
by ツユクサ at 11:10
小ツルさん 「むさしあ..
by wheatbaku at 09:50
バクさま、加州そうせい公..
by 鶴ヶ島の小ツル at 16:57
加州そうせい公様 私も..
by wheatbaku at 07:34
バクさん 昨日の江戸楽..
by 加州そうせい公 at 17:31
mikawaさん 先日..
by wheatbaku at 12:55
宮越さん コメントあり..
by wheatbaku at 09:03
宮越さんからコメントをい..
by wheatbaku at 09:00
mikawaです。先日は..
by mikawa ケンイチ at 08:17
ツルさん 名古屋に住ん..
by wheatbaku at 16:18
獏さま ははあ、あの石..
by 鶴ヶ島の小ツル at 15:20
やぶひびさん NHKB..
by wheatbaku at 17:54
今夜3/3.20:00~..
by やぶひび at 12:49
最新のトラックバック
『西郷どん』、恋愛ごっこ..
from Coffee, Cigare..
各合戦の動員人数について..
from Coffee, Cigare..
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
天ぷらの歴史 (天麩羅処..
from グドすぴBlog
再出発が始まる
from 哲学はなぜ間違うのか
穴八幡宮
from Coffee, Cigare..
風景印  28.4.30..
from としちゃんの風景印・郵趣日誌
山王日枝神社@溜池山王
from たび☆めし☆うま BLOG
浮世絵の誕生・浮世絵の歴..
from dezire_photo &..
お気に入りブログ
江戸・東京ときどきロンドン
ファン
ブログジャンル
歴史